朝市通りの店主から“焼けた珠洲焼”の修復依頼 その理由は…

ボランティアを始めて半年が経つが、今も壊れた器の修復依頼は絶えない。男性が持ってきたのは…

てんだ商店 田中宏明さん
「お店にあったんですけど。地震と火事で耐え抜いた珠洲焼で。後日、店から少し欠けてるやつを」

美術家 中村邦夫さん
「焦げてるのは…今回の火事で?」

火事で焼けた珠洲焼。田中宏明さん(33)の店は輪島市の朝市通りにあった。そこで伝統工芸品の珠洲焼などを売っていたが、元日に発生した朝市通り周辺の大規模火災で店を失った。

田中さんも震度7の地震で崩れてきた酒蔵の生き埋めになった。火事や津波のサイレンが鳴る中、1時間後に家族に助け出されたが、腰の骨を折るなどの大けがを負った。

てんだ商店 田中宏明さん
「価値観はガラリと変わりました。色んな人に感謝してるし、絶対にまた再建して、どんな形でも恩返ししたいと思うし」

田中さんが望むのは輪島朝市の1日も早い復興だが、建物の撤去・解体は6月5日から始まったばかり。完了時期の見通しは立っていない。輪島朝市で露店を営む人の平均年齢は70歳を超えているという。

てんだ商店 田中宏明さん
「おばちゃんらが『いらんけ?』って野菜とか売ってるから、この場所が成り立ってるんですね。待って1年なら、また店やろうか、というおばちゃんもいると思うが、これが4年、5年だったら、さすがにもう引退すると思うんですよね。またみんなでやりたい」

田中さんは同じ場所に店を再建させ、そこに“焼けた珠洲焼”を飾りたいと話す。その理由は…

てんだ商店 田中宏明さん
「後ろにサインが入っているこの方はもう作らないって言ってました」


美術家 中村邦夫さん
「今回の地震で?」


てんだ商店 田中宏明さん
「この方は珠洲焼やめるって言ってました。皆さん魂を込めて作っているものなので、作家さんの気持ちを汲みたいなと思って。少しでもみんなの目で見てもらえれば幸いです」

引退を決めた作家の作品を、これからも伝えていきたいという思いだった。

美術家 中村邦夫さん
「責任重大ですよ」

てんだ商店 田中宏明さん
「少しでも良くなるなら…」