個人的投稿から映画が生まれるまで

映画『リリアンの揺りかご』が生まれたのは、津久井やまゆり園障害者殺傷事件を背景にした、私の個人的なFacebookへの投稿がきっかけでした。テレビや新聞に採り上げられ、投稿は爆発的に拡散し、書籍が生まれました。投稿を歌詞として歌にもなりました。この歌を放送するために、TBSラジオと共同で1時間のラジオドキュメンタリー『SCRATCH 線を引く人たち』(2017年)、『SCRATCH 差別と平成』(2019年)が制作されました。さらにこれを映像化したテレビドキュメンタリー『イントレランスの時代』(2020年)が、映画『リリアンの揺りかご』の母体となっています。

ところで、このラジオ『SCRATCH 差別と平成』が2019年の早稲田ジャーナリズム大賞で入選したことから、受賞記念講座で話す機会をいただきました。私は文学部の日本史学専修で近代社会思想史やジャーナリズム史を専攻し、卒業後は毎日新聞社に入社して長崎・島原・福岡・東京と勤務し、2005年にRKB毎日放送に転職しました。母校からの顕彰は本当にありがたかったです。
コロナ禍で1年延期され、2021年6月にオンラインで開かれた講座で私は、「差別と反差別の中立報道はあり得ない」という話をしました。講義後のレビューシートを読むと、受講生140人のうち20人が、私のこの発言に触れていました。
この後、学生たちに向けて、私はこんなメッセージを返しました。『「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」記念講座2021 民主主義は支えられることを求めている!』(瀬川至朗編著、早稲田大学出版部刊、1980円)より、全文を転載します。