取材を終えて、井上キャスターが感じたこと

「福島の漁師と東電の双方の取材を終えて、私が思ったのは『答えがないことだが、それぞれがよりよく折り合いをつけるために、どうすればいいのか、何か落とし所を見出せないか』ということ。

私が取材した相馬の漁師の方は冷静に考えていらっしゃって『処理水の放出も仕方ないことはわかっている』と。

『今までどうしても東京電力といがみ合ってきたところがあるけれども、これから先、何十年と続く中で、自分の子ども、その次の世代も、漁師を続けるために、どうにか協力して、福島の魅力を発信できれば』とおっしゃっていました。

ただその漁師の方も、『そもそも原発事故がなかったら、風評被害は生まれなかった』と複雑な思いを抱えています。そして、東電に対しては『これ以上のトラブルを起こしてほしくない』と切実に願っていました。

こうしたなか、福島第一原発の施設内では2月に、作業員のミスによって汚染水が屋外に漏れ出すトラブルが発生しました。

東電は処理水放出の安全性をアピールするだけでなく、廃炉作業に向けた作業をミスなく丁寧に行うことが求められているように感じます。

そうした姿勢こそが、最長40年続くとも言われる廃炉作業での風評被害を最低限に抑える方策ではないでしょうか」。