ワクチン接種率の実態

1)定期接種2回を逃した世代

麻疹ウイルスの感染予防には、1歳時(第1期)と就学前1年間(第2期)の計2回、定期接種の機会が設けられている。麻疹ワクチンは、1回接種で約93~95%、2回接種で約97~99%の予防効果があるとされており、2回接種を完了することで高い予防効果が期待できる。

しかし、日本ではこれまで定期接種制度が変更されてきた経緯があり、世代によって接種状況が大きく異なることが知られている。 

2026年時点の子ども世代は、原則として2回の定期接種の対象となっている。そのため、免疫不全や重度のアレルギー等により接種不適当者に該当する場合や、個人の判断で未接種となっている場合を除き、多くは2回接種を完了している世代である。 

一方、1990年以降に生まれた36歳以下の成人では、2回接種が未完了の者もみられるため、自身のワクチン接種歴を確認することが望ましい。

また、1990年以前に生まれた36~59歳の成人は、2回接種が制度化される前の世代にあたり、多くが1回接種世代である。この世代では、過去の麻疹罹患歴が明らかでない場合、抗体検査による免疫確認や追加接種(任意接種)の検討が推奨される。

さらに、1966年以前に生まれた60歳以上の世代は、ワクチン導入前に幼少期の自然感染によって免疫を獲得している者が多いとされ、原則として追加接種は不要とされている。ただし、感染歴が不明な場合や免疫不全がある場合には、かかりつけ医への相談が望ましい。

2)集団免疫の維持に必要な水準を下回る

国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、1歳時点でのMRワクチン接種率は、2022年には95.4%であったものの、2023年には94.9%となり、麻疹の流行予防に必要とされる95%の水準を下回った。また、2024年の接種率は92.7%まで低下しており、低下傾向が継続していることから、現状では集団感染を十分に防ぐ水準に達していない。

麻疹には特異的な治療法がなく、治療は対症療法が中心となる。そのため、罹患した場合には、肺炎、中耳炎、脳炎などの合併症を生じる可能性があり、子どもや高齢者、妊婦は特に注意が必要となる。

厚生労働省および国立健康危機管理研究機構は、2026年に入ってからの麻疹流行を受け、4月28日付で注意喚起を行っている。また、各自治体においても、接種忘れが生じやすい就学前児童の保護者を対象に、MRワクチン接種に関する再案内を実施しているほか、独自の予防策として、2回の定期接種を逃した中学3年生以下の子どもや、0歳児をもつ保護者を対象に、1回分の接種費用を助成する方針を示している自治体もある。ぜひ、この機会に、ご自身やお子さまのワクチン接種歴を改めて確認していただきたい。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛)