備蓄米制度の本来目的
現在の政府備蓄米制度は、価格を調整するためではなく、不作などによる供給不足に備える仕組みとして整備された。その出発点が、1993年の平成の米騒動を契機に制定された「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(以下、食糧法)である。
食糧法では米穀の備蓄を「生産量減少によりその供給が不足する事態に備える在庫」と定義している。備蓄米制度は、米価を抑える目的ではなく、供給不足に備える安全対策として設計された。
当初の備蓄制度は、平均的な不作が2年続いても支障が出ないよう、150万トンを基本に、1年保有後に主食用米として販売する回転備蓄方式で運営された。しかし、豊作や過剰作付けで主食用米としての販売が振るわず、在庫と財政負担が膨らんだ。
このため、2002年度から備蓄水準は100万トンへ縮小された。毎年50万トン程度を買い入れ、2年保有後に主食用米として販売するよう、毎年の買い入れ量の縮小に加え、保管期間の延長が図られた。
その後、2011年度からは現在の制度に変更された。収穫前に買い入れ、5年程度保管後に飼料用等へ販売する棚上備蓄方式で運営されている。備蓄米の総量は100万トン程度を維持し、毎年20万トン程度を買い入れると同時に、飼料用米等として20万トン程度を販売している。また現在の方式では、買入時期を前倒しにすることで、市場の価格形成への影響を避ける狙いがある。
ただし、備蓄米の制度目的とは別に、過去には需給緩和局面の市場安定化に使われた例もある。2007年の米価下落局面では、政府は「米緊急対策」として34万トンを買い入れ、市場の価格下落を抑制した。この事例は、備蓄米制度が、本来の供給不足対策という目的を超え、価格安定策として運用され得ることを示している。