・プレミアム付商品券の発行や運営には、多額の事務コストが発生。
・自治体はプレミアム率だけでなく、費用対効果の視点が不可欠である。
・最小限の事務費で生活者支援を最大化する、最適な手法の選択が鍵。

はじめに

国は、物価高騰の影響を受けた生活者や事業者を支援するため、「重点支援地方交付金」を各自治体に交付している。本交付金は2023年11月に創設されて以降、毎年度の補正予算や予備費を通じて継続的に交付されている。交付金の活用方法は自治体に委ねられているが、国は複数の推奨事業メニューを示しており、その一つに「プレミアム付商品券」がある。「2万円で2万5千円分の買い物ができる」と聞けば、お得な制度に思える。しかし実際には、発行や運営に伴う多額の事務コストが生じている。

プレミアム付商品券は、地域経済の活性化や生活者支援を目的として、これまで繰り返し実施されてきた。今回は、2019年に全国で実施されたプレミアム付商品券事業を振り返ったうえで、現在実施されている事例と比較しながら、その課題を見ていく。なお、2019年の事業は消費税率の引上げに伴う負担緩和を目的としており、現在の物価高対策とは政策目的が異なる。しかし、事務コストの観点から見れば、両者には共通点がある。

2019年の事業では、5,000円分のプレミアムを届けるために約6,700円の事務費

2019年10月、消費税率は8%から10%へと引き上げられた。この負担を緩和するため、政府は低所得者と子育て世帯(0~2歳児)を対象に、全国の市区町村でプレミアム付商品券事業を実施した。対象者は2万円を支払うことで2万5千円分の商品券を購入でき、その差額5千円は国が補助する仕組みである。
内閣府「プレミアム付商品券事業の実績に関する報告書(2020年12月)」によれば、総事業費1,026億円のうち、プレミアム相当費が440億円、商品券の発行や販売などに要した事務費が586億円であり、総事業費における事務費割合は57.1%であった。これは、5,000円分のプレミアムを届けるために、約6,700円の事務費がかかっていたことを意味する。

では、なぜこれほど多額の事務費がかかったのか。主な内訳は次のとおりである。

① 対象者の抽出や個別周知、要件該当性の審査:163億円
② 商品券の印刷、販売、換金:186億円
③ 広報や問合わせ対応(コールセンターの設置を含む):86億円
④ システム構築や事業実施体制の整備:133億円

このうち、対象者を選定するための経費(①)と、紙の商品券を発行・流通させるための経費(②)だけで、事務費全体の59.6%を占めていた1。

こうした構造は2019年の事業に特有のものではない。2015年の「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」におけるプレミアム付商品券事業では、総事業費523億円のうち、プレミアム相当費が430億、事務費が92億円であり、総事業費における事務費割合は17.7%であった。金額に換算すると、5,000円分のプレミアムを届けるのに約1,100円の事務費がかかっていた計算になる。2019年ほどではないものの、商品券を発行・流通させる仕組み自体に一定の事務コストが伴うといえる。