ランダム商品を買う理由は「その形式でしか商品が提供されていないから」

ここまで述べてきた通り、現在のランダム商法は、構造そのものとして誰も幸せになりにくいシステムになりつつある。BANDAI SPIRITSの調査が炎上した背景にも、実際に高頻度でランダム商品を購入している消費者たちの疲弊感やストレスが、十分に汲み取られていないように見えたことが大きいだろう。調査では「ワクワク感」や「引き当てた時の嬉しさ」が強調されていたが、SNSでは、「本当は選んで買いたい」「仕方なく付き合っているだけ」という反応が相次いだ。そもそも、普通に考えれば、「欲しいものが必ず手に入るとは限らない」という状態は、本質的には強いストレスを伴う。まして、それが高額商品であればなおさらである。

それでも消費者がランダム商品にお金を払っているのは、冒頭でも述べた通り、「その形式でしか商品が提供されていないから」に過ぎない。もし最初から選んで購入できるオプションが存在するのであれば、わざわざランダム形式を選ぶ消費者は決して多くないだろう。しかし完全選択制にすると人気キャラクターへ需要が集中し、不人気キャラクターの商品だけが売れ残る問題が発生する。実際に中身が見えるタイプの食玩売り場などでは、人気キャラクターだけが早々に消え、人気の低いキャラクターだけが長期間棚に残り、最終的には値引き販売される光景も珍しくない。つまり現在のランダム商法は、人気格差を“見えにくくする”ことで市場を成立させている一方、その負担を消費者側へ押し付けることで成り立っている構造でもあるのである。

このような背景からか、2026年4月末、株式会社バンダイは、同社ブランド「クレアボーテ」から発売予定だった一部商品のランダム販売を取りやめ、通常販売へ変更すると発表した。対象となったのは、アニメ・ゲーム作品とコラボしたコスメシリーズ「キャラコスメチケット」の『アイドリッシュセブン』および『刀剣乱舞ONLINE』関連商品で、当初は8種類以上のランダムBOX形式での販売が予定されていた。しかし、社内での再検討を経て、「好きな種類を選べる仕様」へ変更することを決定。さらに、価格についても据え置きとし、消費者負担を増やさない形で仕様変更を行うとしている。今回の変更について、企業側は明確な理由を公表していない。しかし背景には、近年高まり続ける「ランダム販売」に対する消費者の不満があるとみられる。

「ランダムだから仕方ない」は許容されるのか

SNS上ではランダム商品の極端な偏りもたびたび議論になっている。Xでは、あるユーザーが「全11種類の商品を10個購入したところ、9個が同じ絵柄だった」と投稿し、大きな話題となった。単純計算では極めて低確率のケースであり、「本当にランダムなのか」「封入率に偏りがあるのではないか」と疑問視する声も広がった。一方で、このユーザーが消費生活センターへ相談したところ、「ランダム商品の特性上、同じものが重複して出る可能性があることは事前に明記されているため、問題として受理できない」といった趣旨の回答を受けたという。

この事例は、現在のランダム商法が法的には“購入者がリスクを理解したうえで参加する商品”として扱われている現状を象徴している。実際、多くのランダム商品には「絵柄は選べません」「同じ商品が続けて出る場合があります」といった注意書きが記載されており、企業側も一定の説明責任を果たしている形になっている。

しかし消費者側では、「注意書きがあること」と「納得感があること」は別問題として受け止められている。単なる違法性の有無だけではなく、「ファンにとって誠実な販売方法なのか」という倫理的・感情的な観点からランダム商法を捉える議論が強まっている。

なにより、ランダム商法をめぐる問題は近年に始まったものではない。象徴的な事例として知られているのが、2008年の「AKB48」関連商品の騒動である。AKB48は2008年2月発売のシングルCD販売において、購入特典としてメンバー44人分のソロポスターをランダム配布する施策を実施した。さらに、44種類すべてを集めた購入者を特別イベントへ招待する企画も用意されていた。しかし、ポスターはCD1枚につき1枚封入される仕様であり、加えて「メンバーは選択不可」「44種類の中からランダム配布」とされていた。そのため、イベント参加には理論上最低44枚のCD購入が必要であるうえ、実際には重複が発生するため、それ以上の大量購入が前提となる仕組みだった。ちなみに、1回も同じポスターが出ることなく全44種のポスターが揃う確率は、計算上では77京1468兆8909億1789万4000分の1とされている。さらにポスター付のCDが販売されたのはAKB48劇場カフェのみで、販売期間は2008年2月26日から28日の3日間のみと限られていた。

その後、運営側は公式サイトで、「ファンの皆さまの加熱を招いてしまったことを深くお詫び申し上げます」と謝罪。さらに、このイベント招待方式について、「独占禁止法上の不公正な取引方法に抵触するおそれがある」として、イベント自体およびポスター特典施策を中止すると発表した。

実際、現在のランダムグッズ市場でも、「全種類購入特典」「コンプリート特典」「交換前提の販売設計」などがたびたび議論の対象となっているが、ファン心理をどこまでマーケティングに利用してよいのかという問題は、依然として解決されていない。