(ブルームバーグ):ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週、FRBがインフレを警戒しているとのメッセージをあらためて強く打ち出した。その姿勢が試される場面は、近く訪れるかもしれない。
7月28、29日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の据え置きが予想されている。しかし、AIブームを背景にテクノロジーや設備のコストが跳ね上がり、原油相場も再び上昇する中、その後の会合では、ウォーシュ氏が「ファミリーファイト(家族同士のけんか)」と呼ぶFOMCメンバー間の意見の相違が顕在化する可能性がある。
7月のFOMC会合前のブラックアウト期間に入る直前には、およそ1週間にわたり、そうした緊張が鮮明となった。複数の当局者が早急な対応の必要性を主張した一方、さらなるデータを見極める時間はあるとの見解を示す当局者も複数いた。
ウォーシュ議長自身は、FRBはインフレを決して容認しないとの明確なメッセージを発して議論を先導した。議会証言に臨んだ同氏は、根強い物価上昇を自身の任期中に放置することはないと言明。
6月のインフレデータは伸びが市場予想を下回ったが「任務完了」と言うには程遠いとし、「粘着的な物価を粘着的でなくすことが私のコミットメントだ」と述べた。
ウォーシュ氏は、利上げが必要になる可能性があると明言することはなかった。しかし、新FRB議長には利下げをしてもらいたいと言っていたトランプ大統領に指名された経緯を踏まえると、議会証言での発言はインフレ抑制に向けた強い姿勢を印象づけた。
16日にはジェファーソンFRB副議長が一歩踏み込み、インフレが近く鈍化しなければFRBは利上げを検討する可能性があると述べた。一方、現時点では、金融政策は引き続き適切な位置にあるとの見解も示した。
クック理事は行動を起こす用意があるとしつつ、今後入手するデータを見極める時間的余裕はあると発言した。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、インフレは既にピークに達したとの見方を示した。
他の当局者からはより迅速な対応の必要性を訴える声も上がっており、FRB内の意見の隔たりが浮き彫りになっている。
タカ派への傾斜
ダラス連銀のローガン総裁は小幅な利上げを支持。ウォラー理事とクリーブランド連銀のハマック総裁も、利上げが必要になる可能性を指摘した。ハマック総裁は、自身のこれまでの任期2年間で初めて、FRBはインフレ抑制のために行動を起こす必要があるとの声を企業から聞いたと述べた。
この3人はいずれも今年のFOMCで投票権を持つため、7月会合で少なくともいくつか反対票が投じられる可能性がある。市場が不意を突かれるサプライズにつながる余地もある。
ウォーシュ氏はパウエル前議長と異なり、政策金利動向を事前に市場に示唆することには関心がないとの姿勢を明確にしている。
もっとも、市場参加者と同様に、大半のエコノミストは7月利上げの可能性は低いとみている。
ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンのチーフエコノミスト、ヘザー・ロング氏は「FRBは従来に比べてタカ派姿勢を強めているが、指導部は行動を急いでいない」と指摘。
「重要なのはインフレがどの程度の広がりを持ち、根強いかどうかだ。それを見極めるには時間を要する」と述べた。
6月の米消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前月比で6年ぶりのマイナスとなり、コア指数が横ばいとなったが、こうした物価上昇圧力の緩和は一時的なものに終わる可能性がある。
米国とイランの衝突が再燃し、原油価格が再び上昇している。また、エコノミストの間では、AIブームに伴う需要拡大が物価上昇圧力を押し上げる傾向が強まっているとの見方も広がっている。
11月の中間選挙も状況を複雑にする。前回の大統領選を控えた2024年9月にFRBが利下げを実施した際、トランプ氏は、民主党候補のカマラ・ハリス氏を後押しするための「政治的な動き」だと批判した。今年秋に利上げを行えば、ホワイトハウスから再び政治的圧力を受ける可能性がある。
ウォーシュ氏はFRB議長への指名を確実にするまでの間、AIがもたらす生産性向上などを理由に政策金利の引き下げを実施する道筋を描いていた。しかし、物価上昇圧力が広範囲かつ根強いことが明らかになれば、インフレ抑制という自身の約束を果たすために利上げを余儀なくされ得る。
KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は、米国で相次ぐ一時的な価格上昇がいずれインフレを定着させる恐れがあると指摘。その場合、FRBは対応を迫られ、わずか1年前に進めた利下げを巻き戻し始める以外、選択肢がほぼなくなると述べた。
「タカ派はFRB内で周辺的な存在から中核へと移った」と同氏は語った。
原題:Warsh Shows His Inner Hawk as Inflation Debate Heats Up(抜粋)
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