ランダム商法の“インフレ化”

総じて、現在のランダム商法をめぐる議論は、「ランダム販売そのものが悪である」という単純な話ではない。むしろ問題となっているのは、推し活文化の変化や商品単価の高騰によって、従来は“遊び”として成立していたランダム性が、消費者に過剰な負担を強いる構造へと変質している点にある。

かつてのランダム商品は、比較的低価格で楽しめる“運試し”として機能していた。カプセルトイや食玩、ブラインド仕様の缶バッジなどは、「何が出るかわからない」という偶然性そのものを楽しむ余白があり、たとえ目当てが出なくても、「まあ数百円だし」で済ませられる範囲だった。しかし現在では、その“ランダム性”そのものがインフレ化している。ここでいう“インフレ化”とは、商品単価・種類数・限定性・転売価値などが膨張し、消費者負担が増大している状況を指す。まず、商品単価が大きく上昇した。従来は数百円程度が中心だったブラインド商品に、現在では2000~3000円するアクリルスタンドやフィギュアなど、高価格帯の商品が大量に導入されている。さらに、封入される種類数も増加傾向にあり、10種、20種を超えるラインナップも珍しくない。イベント限定仕様、店舗別特典、期間限定販売なども加わることで、“自引き”の難易度は以前より格段に高くなっている。

また、ランダム商法の“インフレ化”は、商品単価や種類数だけに留まらない。近年では、ランダムグッズそのものが転売市場における投機対象として機能するようになっている点も大きい。本来、グッズは「好きだから買う」ものであった。しかし現在では、「後で高値になるかもしれない」「人気メンバーなら利益が出るかもしれない」という視点で購入されるケースも増えている。特に人気コンテンツでは、発売直後からフリマアプリに大量出品されることも珍しくなく、ランダム商品自体が“資産”や“商材”のように扱われる場面すらある。

その結果、本来はファン向けの商品であるはずが、「推しを引きたいファン」と「利益目的で購入する層」が同じ市場で競合する構造が生まれている。大量購入やロット買いも発生しやすくなり、結果として一般消費者が正規価格で購入しづらくなる。

つまり、かつては「少額で運試しをする遊び」だったものが、現在では「高額商品を何度も購入しなければ推しに辿り着けない構造」へ変化しているのである。そこでは、“何が出るかわからないワクワク感”よりも、“どこまでお金を使えば手に入るのかわからない不安”の方が前面化しやすい。

一方で、ランダム商法には、人気格差を緩和し、作品全体の商品展開を支えるという側面も存在していた。完全選択制へ移行すれば、人気キャラクターだけに需要が集中し、マイナーキャラクターの商品化機会が減少する可能性も高い。つまり、現在の問題は「選択式かランダム式か」という二項対立ではなく、“誰が負担を引き受けるのか”という構造の問題でもある。

だからこそ、単純にランダム販売を否定・肯定するのではなく、消費者の納得感をどのように設計するかが重要になっていく。後日通販、交換支援、受注販売など、ファンの負担を軽減する仕組みをどこまで組み込めるかによって、ランダム商法のあり方そのものも変化していくだろう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員 廣瀬 涼)