(ブルームバーグ):イラン戦争による原油の供給不安を和らげてきた代替輸送ルートの一つである紅海では、一部の船舶が航路変更を始めた。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、サウジアラビアの港湾に出入りする船舶への攻撃を警告したことを受けた動きだ。一方、ホルムズ海峡では船舶への攻撃が続いている。
フーシ派による警告後、21日にはイエメン沖で航行を一時停止する原油タンカーが相次いだ。また、サウジ産原油を積んだ一部の船舶はUターンし、スエズ運河方面へ北上した。一方、船舶追跡データによると、なお紅海へ向かうタンカーも確認された。この日早くには、アジアの複数の買い手が現地での積み込みを引き続き予定していると述べていた。
イラン戦争が始まって以降、紅海経由の原油輸送の重要性は増している。湾岸最大の産油国サウジアラビアが、産出した原油のかなりの部分をホルムズ海峡を迂回するパイプライン経由に切り替えたためだ。一方、ホルムズ海峡では位置情報を送信せずに航行を続ける「ダークタンカー」を狙ったとみられる攻撃が相次いでおり、航行する船舶への脅威が強まっている。
こうした動きは、イラン戦争による供給ショックを和らげてきた二つの輸送手段が揺らぎ始めたことを示している。

米国とイランが攻撃の応酬を再開したことで、原油価格は7月に入って約25%上昇した。足元では、紅海ルートやホルムズ海峡を通る「ダークタンカー」が原油供給をなお支えている。しかし、世界の原油在庫の余力が薄れる中、輸送の混乱がさらに広がれば、市場は一段と厳しい局面を迎える可能性がある。
国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は21日、「ホルムズ海峡や周辺のエネルギーインフラを巡る戦闘の激化は、エネルギー供給への懸念と市場の先行きに対する不透明感を高めている」と指摘。「ホルムズ海峡の迂回ルートとして重要性を増しているバベルマンデブ海峡への脅威は、こうした懸念を一段と強めている」と述べた。
原油タンカー業界の幹部は21日、船会社がサウジアラビアの紅海沿岸にあるヤンブー港への寄港に慎重になり始めているとの見方を示した。

ホルムズ海峡では、位置情報の送信を止めたまま航行していた船舶で、乗組員が退避する事案が2日連続で発生した。事情に詳しい関係者によると、ホルムズ海峡を往復する「シャトル輸送」はなお続いているものの、攻撃が始まる前に比べると減っている。
世界の海上交通を監視する共同海事情報センター(JMIC)は21日、「オマーン沖で相次ぐタンカーへの攻撃は、運航会社の判断をさらに慎重にさせ、ホルムズ海峡周辺を航行する船舶の数を大幅に減少させた」と述べた。
高まる供給リスク
もっとも、状況はなお流動的で、一様ではない。フーシ派の警告にもかかわらず、ヤンブー港へ向かう船舶も依然として確認されている。影響の大きさは、船主や荷主がどこまでリスクを許容するかに左右されそうだ。
フーシ派の警告が出された後、中国船籍の船舶数隻が紅海へ向かう航路を変更し、Uターンした。ギリシャのダイナコム・タンカーズ・マネジメントが運航管理する原油タンカーも引き返した。同社ではここ数日で3隻が攻撃を受け、このうち1隻はホルムズ海峡で半ば沈没した状態となっている。
中東以外でも、世界の原油供給を巡るリスクは高まっている。ロシアの黒海沿岸にあるターミナルでは、一連の攻撃で輸送に支障が生じた。同ターミナルはカザフスタン産原油の大半を積み出している。
クラークソンズ・セキュリティーズのアナリストはリポートで、紅海経由の輸送まで混乱すれば、すでに高騰している超大型原油タンカー(VLCC)の運賃がさらに押し上げられる可能性が高いと指摘した。タンカー市場は過去最大級の好況にあり、VLCCの運賃は現在、1日当たり20万ドル近くに達している。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)グローバル・リサーチのコモディティー調査責任者フランシスコ・ブランチ氏はブルームバーグテレビとのインタビューで、バベルマンデブ海峡について「ここも新たなボトルネックになる」と指摘。「ホルムズ海峡封鎖の影響を和らげてきた主要な代替手段の一つは、輸送ルートを紅海経由に切り替えることだった」と述べた。
原題:Oil Tankers U-Turn After Houthi Threat as Hormuz Traffic Falters(抜粋)
--取材協力:Priyanjana Bengani、Alaric Nightingale、Yongchang Chin、Weilun Soon.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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