(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、イランとの早期協議に慎重な姿勢を示した。両国は攻撃の応酬を続けており、紅海ではイエメンの親イラン武装組織フーシ派が船舶の航行を脅かしている。
トランプ氏は21日、フーシ派が紅海の航路を妨害すれば対応すると表明した。ただ、具体策には言及しなかった。
米国のイラン攻撃が続く中、仲介国は和平交渉の再開に向けた調整を続けている。世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡や紅海での緊張の高まりを受け、原油価格は21日の取引で3日続伸した。
トランプ氏はこの日、ホワイトハウスでレバノンのアウン大統領と会談。冒頭で記者団に対し「イランは必死に会談を望んでいる。しかし、本気で意味のある協議をする用意が整うまでは、われわれは会うつもりはない」と述べ、攻撃を続ける考えを示した。

一方でイランは、さらなる協議を求めているとする米国の主張を否定している。こうした中、仲介国は暫定和平合意の再建を目指して調整を続けており、イランのモメニ内相は21日にパキスタンを訪問した。しかし、これまでのところ進展は伝えられていない。
海水淡水化施設を攻撃
原油価格は、2月末に米国とイスラエルがイランへの空爆を開始して始まった約5カ月にわたる戦闘で敵対行為が再開されたことを受け、7月に入って約20%上昇した。
米中央軍は、一晩でイランの軍司令部、発射拠点、防空施設を攻撃したと発表した。一方、イランはクウェートとヨルダンの施設を攻撃し、クウェート政府は被害を受けた施設に送電設備と海水淡水化施設が含まれていると明らかにした。
英海軍は、ホルムズ海峡周辺で2隻の船舶が攻撃を受けたと報告。同海峡の商舶航行は、この3週間で最低水準となった。
米中央軍はその後、イランの軍事目標への攻撃をニューヨーク時間午後7時に開始したと発表した。攻撃は「11夜連続」となる。
米国防総省は、ニューヨーク市クイーンズ区出身の陸軍軍曹、エンジェル・S・ランパーサド氏(28)が、17日にヨルダンのムワッファク・サルティ空軍基地で敵の攻撃を受け死亡したとみられると発表した。同氏はこれまで行方不明とされていた。
米軍はすでに、17日以降にイラク北部とヨルダンで軍人3人が死亡したと発表している。イランによれば、米軍の攻撃によって橋が破壊され、50人超が死亡したという。
フーシ派は20日、サウジアラビアに対する海上封鎖を実施すると表明した。同国が紅海経由で輸出する数百万バレル規模の原油供給が脅威にさらされる恐れがある。ブルームバーグが確認したメールによると、フーシ派は全ての船舶に対し、サウジの港への寄港を控えるよう警告した。
フーシ派による船舶への脅威について問われたトランプ氏は、「そういうことが起きれば、われわれが対処する」と述べるにとどまり、詳細は明らかにしなかった。

サウジ主導の有志連合は、周辺海域を航行する船舶の安全確保に向けた措置を講じていると発表。サウジ外務省も声明で、国際法に基づき、船舶を保護するために必要なあらゆる措置を講じると表明した。
米国ではガソリン小売価格が1ガロン(約3.8リットル)=4ドルを再び上回っており、11月の中間選挙を控えるトランプ氏と共和党にとって逆風となる可能性がある。
トランプ氏は21日、ホルムズ海峡での攻撃について問われ、「イランはおそらく選挙に影響を及ぼそうとしている」と述べた。
さらに「米軍が明日にでも撤退すれば、われわれは大きな成果を残したことになる。しかし、われわれは明日撤退するつもりはない」とし、米国とイスラエルが核施設と疑うイランの「ピックアックス山」への攻撃を近く実施する可能性を改めて示唆した。
イランは、自国の核施設やその他の重要施設が攻撃を受けた場合には、「強力な攻撃」で対応すると表明した。国営イラン放送(IRIB)が統合軍司令部の声明を伝えた。
へグセス米国防長官は21日の議会証言で、対イラン戦争に要した費用は約375億ドル(約6兆1200億円)に上るとの最新推計を明らかにした。5月後半時点では政府当局者が290億ドルとしていたが、一部の専門家はこの試算が過小評価だと批判していた。ヘグセス氏は、670億ドル規模の追加国防支出法案の必要性を訴えるため議会を訪れた。
重要な交渉材料
イラン学生通信(ISNA)によれば、紛争の主要な仲介役を務めるパキスタンとカタールは、7月9日より前の米国とイランの立場に戻ることが、敵対行為を緩和するための第一歩になるとみている。ホルムズ海峡の支配を巡る直近の戦闘は同日に始まった。
ロイター通信が、仲介国が10日間の停戦を提案したと報じたことについて問われた米政府当局者は、トランプ氏は現在、ホルムズ海峡で船舶を攻撃したイランへの報復に注力していると述べた。当局者によると、同氏が方針を変更しない限り攻撃は継続される一方、戦争終結に向けた外交努力も続けられている。
イランのアラグチ外相は、外交を放棄するつもりはないが、軍事攻撃を受けている状況で交渉の場に戻ることを強いられることもないと指摘。
通信アプリのテレグラムに掲載されたインタビューで、「ホルムズ海峡とペルシャ湾におけるイランの行動は世界的な影響を及ぼし、われわれはグローバルプレーヤーとなった」と述べ、ホルムズ海峡の支配は米国に対する重要な交渉材料で、自国の安全保障に不可欠と位置付けていると強調した。
イランはホルムズ海峡の通航管理を行う権利は自国にあると主張し、クウェートとヨルダン、バーレーン、イラクにある米軍基地を攻撃している。クウェート・オイル・タンカーが保有する石油製品タンカー「カイファン(Kaifan)」は、戦闘の激化で航路の利用が減少する中、ホルムズ海峡で攻撃を受けた最新の大型船舶となった。

米国とイランの戦闘が激化する中、湾岸アラブ諸国の米国の同盟国では、自らの安全保障と経済が脅かされていることへのいら立ちが強まっている。そうした不満は、今後の米国の対応を巡り各国の見解が分かれていることにも表れている。
事情に詳しい複数の関係者によると、一部当局者は、トランプ氏がイラン国内に地上部隊を投入し、さらには主要原油輸出拠点であるカーグ島を制圧することも含め、軍事作戦を拡大すべきだと考えている。同関係者は非公表情報だとして匿名を条件に語った。
トランプ政権1期目で中東担当外交官を務め、現在はワシントン近東政策研究所のフェローを務めるデービッド・シェンカー氏は、「多くの当局者は『緊張を緩和するには、まず緊張を高める必要がある』と考えている」と指摘。「ホルムズ海峡をめぐる問題でも核問題でも、現在の状況ではイランからいかなる譲歩も引き出せない。さらなる対応が必要だ」と述べた。
原題:Trump Plays Down Prospects of Iran Talks Amid Red Sea Threat (2)、Trump Plays Down Prospects for Iran Talks Amid Red Sea Threat(抜粋)
(米中央軍の発表やイラン外相の発言などを追加して更新します)
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