オタクはランダム商品に飽き飽きしている

しかし、それはあくまでも、「ランダムの中から何が出てくるかわからない」という不確実性そのものを“楽しさ”として受け入れられる層に限った話でもある。すべての消費者が、その偶然性やギャンブル性をポジティブに捉えているわけではない。現在では前述した定義で挙げたようなランダム提供型の商品が広く普及しており、さらに、アニメやアイドル関連グッズにおいても、いわゆる「ブラインドパッケージ」が標準化している。消費者は中身の見えない状態で商品を購入し、その中から自分が特に支持するキャラクターやメンバー、いわゆる“推し”を自力で引き当てなければならない。

ここで重要なのは、単なるコレクション性だけではなく、「多数の選択肢の中から特定の一人(あるいは一体)だけを強く求める」という、推し活特有の欲望構造がランダム商品と結びついている点である。たとえば複数人で構成されるアイドルグループの場合、消費者はグループ全体を均等に応援しているわけではなく、その中の特定メンバーを“推し”として選び、その人物のグッズだけを集中的に求める傾向がある。

従来のランダム商品は、「レアが出るか」「当たりを引けるか」といった射幸性によって消費を促進してきた。しかし、現代の推し活市場におけるランダム商品では、その構造はやや異なる。そこでは、「景品の質や大きさ、価値が高いと嬉しい」ということよりも、「このメンバーが欲しい」「このキャラクターだけが欲しい」という明確なウォンツを前提に購入が行われるのだ。

そのため、消費者の中で欲しい対象が具体的に定まっている場合、それ以外の商品は事実上すべて“はずれ”として認識されやすい。たとえ一般的には人気が高く、“当たり”とされるメンバーのグッズであっても、自身の“推し”でなければ交換や譲渡に回されるケースも少なくないのである。

実際、前述したBANDAI SPIRITSによる調査が公開されると、SNS上では大きな炎上が発生した。調査では、「ドキドキ・ワクワク感」や「目当てを引けたときの嬉しさ」といったポジティブな側面が強調されていたが、それに対してユーザーからは、「本当は選んで買いたい」「仕方なくランダムに付き合っているだけ」「消費者の不満を無視している」といった反発が相次いだ。

特に推し活層からは、「欲しいものが出るまで買い続けなければならない」「交換や転売を前提にしないと成立しない」「他人の推しを“はずれ”と感じてしまうことがつらい」など、ランダム商法によって生じる疲弊感を訴える声が多く見られた。また、「ランダム販売が標準化しすぎていて、実質的に選択肢がない」という指摘も少なくなかった。つまり現在のランダム商法は、「偶然性を楽しむ娯楽」として受容する層と、「推しを人質に取られているように感じる」層との間で、認識が大きく分かれているのである。

89.9%がランダムグッズを「嫌い」と回答

BANDAI SPIRITSの調査結果がリリースされてすぐ、株式会社Hamaru Strategyが実施した「ランダムグッズに関する消費者意識調査2026」では、ランダム商法に対する否定的な意識が顕著に表れた。まず、「ランダムグッズは好きですか」という質問に対し、「嫌い」「非常に嫌い」と回答した人の合計は89.9%に達した。

ランダムグッズに対する不満として最も多かったのは、「欲しいものが手に入らない可能性がある」で98.5%だった。推しキャラクターや特定メンバーの商品を求めていても、狙った商品を確実に入手できないことが、消費者に大きなストレスを与えていると考えられる。また、「通常販売のグッズよりお金が余計にかかる」と回答した人も91.6%に上った。目当ての商品を引き当てるまで購入を繰り返す必要があるため、結果的に出費が膨らみやすい構造への不満が強い。

そのほかの要因についても、調査結果を踏まえながら筆者なりに考察してみたい。

・高額転売が横行する(85.4%)

ランダム商法では、特定の人気キャラクターやメンバーに需要が集中しやすく、供給数以上に“欲しい人”が発生する。その結果、フリマアプリやオークションサイトでは定価を大きく上回る価格で転売されるケースが常態化している。特に人気作品では、「自力で引き当てるより転売品を買ったほうが安い」と判断される場面も多く、ランダム販売が二次流通市場の高騰を誘発している。

・他の人の推しを『はずれ』と思ってしまうのが心苦しい(80.9%)

推し活文化では、それぞれのキャラクターやメンバーに熱心なファンが存在している。しかしランダム販売では、自分の推し以外を“交換要員”や“不要品”として扱わざるを得ない場面が生まれる。そのため、「誰かにとって大切な推しを、自分は“はずれ”だと感じてしまう」ことへの罪悪感や居心地の悪さを抱える消費者も少なくない。

・交換の手間がかかる(79.3%)

ランダム商品では、欲しいものを手に入れるために、SNSや現地交換を通じて他者と取引する文化が形成されている。しかし、交換相手を探す、条件を確認する、発送作業を行うといった負担は決して小さくない。特に近年は、詐欺やドタキャンへの警戒も必要となっており、「推しを集めるための労力」が消費者負担として重くなっている。

・買い占めが発生する(74.0%)

人気作品のランダム商品では、欲しいキャラクターを引き当てるために大量購入を行う人も多い。その結果、発売直後に商品が売り切れたり、一部の人による買い占めが発生したりするケースが後を絶たない。特に個数制限が緩い場合には、“積み”を前提とした大量購入競争が起こりやすく、気軽に楽しみたい層ほど購入機会を失いやすい構造になっている。前述した転売目的の層がロットで購入したり、大量に買い占めることでファン層の手に渡る前に二次流通市場に流れてしまうというケースもある。

・人気の差が顕著に現れる(70.1%)

ランダム商法では、交換市場や転売価格を通じてキャラクター・メンバー間の人気差が可視化されやすい。交換募集の成立速度や価格差、譲渡のされやすさなどによって、「誰が人気で、誰が不人気か」が数字や市場価値として現れてしまう。これは、ファンにとっても本人にとっても心理的負担となりやすい。

・推しが人気なので、交換が成立しづらい(63.9%)

人気メンバーや人気キャラクターを推している場合、同じものを欲しがる人が多いため、交換市場では供給不足が起こりやすい。そのため、自分が交換に出せる商品では条件が合わず、交換そのものが成立しにくくなる。結果として、さらに追加購入を行わざるを得なくなり、出費が膨らむ原因にもなっている。

・購入が大変(例:何度も列に並ぶなど)(63.7%)

人気作品のランダムグッズ販売では、整理券配布や長時間待機、再入場制限などが発生することも珍しくない。欲しい商品を手に入れるために何度も列へ並び直したり、複数店舗を回ったりするケースもあり、単なる買い物以上の労力が求められる。特にイベント会場限定商品などでは、“購入する権利”そのものが競争化している状況も見られる。