昭和平成のあるべき婚からの脱却へ

「最近、8月の結婚が増えているようなのですが、どうしてでしょうか?」という最初の質問への回答は、「春や秋といった気候のいい時期に入籍が集中する現象が緩和され、従来では悪条件とされる月も含めて、入籍月が分散化されている結果」という回答となった。

ちなみに、どうして春秋年末に集中しなくなったかについては、3つの理由があると考えている。

察している読者も少なくないと思うが、ナシ婚(挙式や披露宴のカット)が中長期でみて増加していることがまず挙げられる。

リクルートブライダル総研の「結婚総合意識調査2024」によれば、披露宴やウェディングパーティを実施した割合は、

20代以下: 2019年51.7%、2024年45.5%
30代  : 2019年49.6%、2024年44.3%

となっている。

招待客を気にしなくてもいいのであれば、天候や気候を特段気にする必要もない。写真撮影のみの結婚も2024年12.6%(2020年6.3%)、ウェディングイベントは全くしていないとする回答割合も22.2%(同19.9%)となっている。

2点目はあまり一般的に指摘されていないが、同じ春でも3月だけは人気月として残留している一方、4月と5月が消えた理由として、「共働き夫婦の増加」があるのではないかと考えられる。

筆者が20代だった1990年代までは、専業主婦世帯が共働き世帯よりも多く、「寿退社」という今となっては死語も存在した。

女性が仕事を辞めるのであれば、男性の仕事都合のみで入籍時期や、入籍にともなうイベントの時期を決めやすい。

しかし、双方とも働きつづける中では、4月にどちらかが異動して新天地での慣れない業務を学ばねばならない上に、招待客も様変わりしてしまう、といった問題が生じやすくなる。

こういった背景で、新年度が4月に開始する企業が圧倒的な中で、4月入籍が1960~80年代のような人気を見せなくなったのではないだろうか。

最後に3点目として、「コスパ・タイパ重視のZ世代が婚姻多発年齢にある」ことがあげられる。

5月はゴールデンウィークがあるから新婚旅行に行きやすい、と考えるのは中高年世代の発想で、Z世代は「新婚旅行」「リゾート挙式」などをするには割高だ、といった風に考えるのである。

筆者はZ世代の親世代で、周囲に大学生や20代の社会人の子をもつ同世代の親が多くいる。

先日もある女性から「うちの息子は結婚式にかかるイベント費用が安い1月に決めました。12月はクリスマスシーズンでロマンティックな演出が多く、加えて月の後半は年末料金でとにかく高いんです。その分、お正月明けの1月が安かったので決めていました」という話をうかがった。

安定した職をもった共働きカップルであっても、こういったコスパ優先の選択をしている。

ただ、価格だけを追求するのであればもっと月で差がつくかもしれないが、全体的に入籍月の平準化が発生しているため、2人の記念日に入籍するなど、「2人だけの価値観」を最優先している、という見方もできるだろう。

とはいえ、この10年間でみると、婚姻届の数の36%に達する離婚届が提出される大離婚化社会ニッポンという現実もある。

結婚式も大事だが、その後の結婚生活が末永くうまくいくよう、社会がサポートしていくこともとても重要である。大未婚社会の中でようやく出会えた2人を、中長期的にサステナブルに応援していきたい。

※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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