ケース3 リスク回避のためのネタバレ消費

3つ目はコンテンツ消費におけるネタバレだ。冒頭で前述した通り、SHIBUYA109 lab.の調査によればZ世代の約半数がネタバレをしてからのコンテンツ視聴経験があると回答している。

同様にSEEDATAの調査においても映画やドラマを視聴する際に事前に、ネタバレサイトや口コミサイト、考察サイトなど内容を確認してからの視聴経験があるか、という問いに対して54.1%が経験があると回答している。

メルカリ総合研究所の調査からも示唆されているように、Z世代は先の分からないことや想定外のことが起きて気持ちがアップダウンすることは、ある種の「ストレス」と捉える傾向が強い。

日々消費しなくてはいけないコンテンツは極めて多く、その都度感情が揺さぶられること自体がストレスになるため、事前に物語の結末や道筋を知っておきたいのだ。

ネタバレを肯定し視聴を楽しむ層にとっては、自身の持つ事前情報やそれに基づいて立てた予測と実際に視聴しているモノとを重ね合わせて答え合わせをするような視聴体験をしていると言えるだろう。

体験しないとわからない事に対して費用を払う事が映画やレジャーを始めとした「コト消費」の本質であるのだが、体験しないとわからないという点が、わからない事に対して支出するリスクや、予期していない感情になることへのリスクとなってしまっているのだ。

「損」をしたくない

関西学院大学・鈴木謙介ゼミの同調査では、Z世代の消費におけるリスクや失敗に関しても聞いているが、リスクに関する問いを見てみると、「購入前に、その商品が自分に合わなかった場合のリスクを考慮する」は、53.2%で半数を超えている。

失敗に関する問いを見ると、「購入後に安い価格で同じ商品を見つけたら、失敗したと思う」は62.5%、「事前に調べた情報で期待していたほどの商品ではなかった」は52.2%、「購入後に、より自分に合っていそうな別の選択肢を見つけた」は51.0%となっている。

また、面白いのが、「周囲の友人にSNS等で商品を共有したら、予想よりも反応が悪かった」が29.3%と、3割近くが他人からの評価が、消費が失敗だったと判断する要因になっていると回答しているのだ。

ここまで紹介した3つのケースや各所の調査から、若者の消費に失敗したくないという心理は、従来の費用対効果に見合わないという視点に加えて、その消費を行ったことで発生する他の消費機会での損失、自分は一切関与していなくとも他人が得をしている状態など、消費によって生まれる負の影響により左右されており、この「損(マイナス)」を回避する事が消費を決定づける大きな要因になっていると考える。