近年の転職市場の質的変化

1│正規雇用の転職者はどれぐらいいるのか

ここからは、転職市場の質的変化に注目する。まず、どのような転職が増えているかをみるために、労働力調査のデータから、男女別に、雇用形態の4種類の経過パターンごと(「正規→正規」、「非正規→正規」、「正規→非正規」、「非正規→非正規」)に転職者数の推移をみてみる。

男性についてみると、従来から、正規雇用から正規雇用への転職者が最も多いが、2010年代後半からは、さらにこのパターンの増加が目立っている。2013年から2023年までの過去11年間のこのパターンの増加幅は15万人となり、4パターンのなかで最大だった。

女性の場合、もともと雇用者(役員を除く)のうち過半数を非正規雇用が占めてきたため(男性は非正規雇用が約2割)、転職についても、非正規雇用から非正規雇用というパターンが圧倒的に多い。しかしよく見ると、正規雇用から正規雇用というパターンも2013年以降、着実に増え続け、過去11年で倍増した(15万人→33万人)。ただし、正規雇用から非正規雇用というパターンも、過去11年でやや増加した(18万人→24万人)。4パターンを、「正規雇用への転職」と「非正規雇用への転職」の二つにまとめると、その比は、2013には8対2だったが、2023年には7対3となっている。男性に比べれば、依然、件数は半分ほどに過ぎないが、女性でも「正規雇用への転職」が目立ってきている。

2│正規雇用への転職は何歳ごろまでできるのか

それでは、正規雇用の転職は、何歳ごろまで行われているのだろうか。まず男性では、「35歳限界説」という言葉があったように、従来、正規雇用転職者数の半数を34歳以下が占めてきた。この構成割合自体には大きな変化はなく、若い方が有利であることには変わりなさそうだが、近年は、いずれの年代層でも正規雇用の転職者数が増加している。繰り返しになるが、少子化によって若年層の採用の伸びが期待できない中で、正規雇用の中途採用が、中高年にも広がってきたと言えるだろう。

次に女性の場合、正規雇用の転職規模はもともと男性よりも小さいが、近年は、いずれの年代層でも、正規雇用の転職者数が右肩上がりに増え続けている。女性の場合、近年、いずれの年代層でも、就業率と就業者数が上昇しているためだと考えられる。年代層別にみると、特に「25~34歳」と「35~54歳」では、2013年から2023年まで過去11年の増加幅は約10万人に上り、男性の同じ年代層の伸びを上回った。男性以上に、女性に正規雇用での転職機会が広がっていることが伺える。