首都圏(1都3県)のマンション価格は新築、中古を問わず高値圏での推移が続いている。

新築分譲マンションについては、2025年8月の首都圏の平均価格が1億325万円と2か月連続で1億円の大台を超えており、東京23区に限れば1億3,810万円と、いわゆる「パワーカップル」でも手が届き難くなっている。

新築が無理なら中古、となるが、東京23区の中古マンションの70m2換算価格も8月は1億721万円と5月から4か月連続で1億円を超えている。但し、東京23区でも都心部と周縁部では状況が異なる。

本稿では、都心3区、都心6区といった概念的な区分ではなく、物理的に①他の県・東京市部に隣接していない区と②隣接している区に分け、更に③23区に隣接している市と④県庁所在地、⑤それらを除く市町村の階層で中古マンション価格を分析した。

本稿では、国土交通省「不動産情報ライブラリ」に掲載された直近1年間(2024年第2四半期~2025年第1四半期)に取引された中古マンションのうち、下記の物件を除外した37,479件について、取引価格を床面積で割ってm2単価を算出し、70倍することにより70m2換算の価格とした。

・面積(m2):30m2未満
・用途、今後の利用目的:住宅以外の用途が明記されている物件(未記載は含める)
・取引の事情等:記載のある物件

都心部から離れるにつれ価格が低下していくのは想定どおりだが、下がり方に方面別で違いがある。総じて言えば、東京23区では北や東の区は安く、西や南の区は高い。

23区に隣接している市では最も安いのは埼玉県内の市の3,091万円となっている。埼玉県に隣接している東京23区内の区の平均との差は1,782万円と最も価格差が大きくなっている。

これらの価格は最寄駅からの距離や築後経過年数等による品質調整は行っていない単純平均である点、留意が必要であるが、②と③の差という観点で言えば、埼玉県側の市は荒川を越えると1,800万円近く安くなるので、一概には言えないものの、価格だけで言えばお得感が大きいということになる。

ここまでは直近1年間について見てきたが、2005年第3四半期からの四半期データを時系列で見ると、①他の県・東京市部に隣接していない区はなおも上昇を続けているが、それを除いた首都圏全体で見ると、既に頭打ち感が出てきている。

2005年第3四半期を基準とすると、2025年第1四半期の価格は都心では2.32倍、その他は1.46倍と、都心以外でもそれなりに上昇しているが、19.75年間の累積平均上昇率を年率換算すると都心以外は1.94%とほぼインフレ率見合いであり、世の中の物価全体の上昇と比較して著しく上昇しているわけではない。

首都圏のマンション価格が高騰して手が届かなくなったと問題視されるが、高騰を続けているのは都心の一部であり、全体としては落ち着いてきている。

また、地域によっては、値ごろ感がある所も存在しているようだ。一方で、日本においてはそもそも、新築偏重で中古住宅市場の活性化が長らく課題とされてきたが、遅ればせながらようやく中古住宅の価格が上昇に転じて欧米のように住宅が資産として積み上がってきたのは評価すべき事象とも言えるかもしれない。

※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 金融研究部 客員研究員 小林 正宏

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