ハンターが常駐して警戒

富山県警山岳警備隊によりますと、室堂周辺では6月下旬からクマが目撃されるようになり、7月から8月までで27件の目撃情報が寄せられているということです。
なぜ室堂周辺にクマの出没が増えているのでしょうか。
立山カルデラ砂防博物館 白石俊明学芸員
「夏場はツキノワグマが好む食料がすごく少ない、エサに窮する時期。クマが食べる植物も夏場は堅くなったりして消化吸収がすごくしづらい、質の悪いものになってしまう」
白石学芸員によりますと、クマは室堂に生える新芽や雪が残るところに生えた草などのエサを食べるために出没しているということです。
立山カルデラ砂防博物館 白石俊明学芸員
「高山帯にツキノワグマがいるのは珍しいことではない。ただ、昔であればツキノワグマが人を避けたり人につかない行動をとっていたのだろうが、昨今は人に見られても動じない、人から逃げ隠れしない堂々としたクマが増えてきてしまった」
これまでは狩猟や銃による駆除が行われていましたが、近年では檻での捕殺が主流になりました。
こうした変化から人間を恐れるクマの数が減少しているといいます。
立山カルデラ砂防博物館 白石俊明学芸員
「人慣れ個体を作らないことが大事」
記者「それってできますか」
立山カルデラ砂防博物館 白石俊明学芸員
「それがもう期待できなくなっている」
1日、クマへの緊張感が高まる室堂に猟銃を持ったハンターの姿がありました。
立山町は1日から町の職員と立山町鳥獣被害対策実施隊の各1名を室堂へ派遣。
朝から夕方までの時間帯を交代制で万が一に備えます。

立山町農林課 佐伯悦野課長
「クマを捕獲しに来るわけではなくて。危害が加わるというのを最後の段階ですぐに対応するためには、やはり現地に入っている必要があるだろうと」
遭難者の救助とクマの出没が重なった際に警備が手薄になる山岳警備隊を支援し、警戒にあたります。
佐伯課長はクマ被害防止のため、ゴミは持ち帰るなど登山者らに協力を呼びかけます。
立山町農林課 佐伯悦野課長
「山でゴミを出したり、クマにエサを与えたりということがあると、やはり人間の味をしめてしまうので、おいでになるお客様にも周知徹底をしてクマに人間の味を覚えてもらわないということは非常に大事なこと」
相次ぐクマの出没でアウトドア用品店ではクマ対策グッズの需要が高まっています。

800メートル先まで音が届くというベアホーン。臆病な性格だとされるクマには、この大きな音が効果的で人間の存在を認識させるといいます。
さらに食べ残しなどを入れる袋。臭いが外に漏れずらいというもの。
モンベルヴィレッジ立山店 小池健太店長
「クマというのは人間の2000倍くらいの嗅覚を持っているとも言われるので、食事後は匂いをさせない対応する必要がある」
夏山で大量出没を続けるクマ。訪れる際は対策を万全にすることと、クマの生息域に立ち入るという意識を忘れてはいけません。
立山カルデラ砂防博物館 白石俊明学芸員
「生息保護地域であって本来クマの生息地。生息エリアのコアですね。核となる場所なので。人間の方がクマに最大の配慮をしなければいけない」