脳の特定の部分を取り除くと…

そこでOISTの神経生物学の研究チームは、意思決定の柔軟さを調節する役割があるとされる「大脳基底核」の一部、「背内側線条体」に注目。

ここにある「コリン作動性介在ニューロン」と呼ばれる脳細胞群をマウスから取り除いて、同じテストを繰り返しました。

結果は驚き。「コリン作動性介在ニューロン」を取り除いたマウスから、「敗者効果」が消えたんです! つまり、過去に負けていても、それを理由に優位性を落とさなくなった。 “負けグセ” を発揮しなくなったのです。

一方で「勝者効果」には変化はありませんでした。このことから、“勝ちグセ” には別ルートの脳回路が関わっていそうだと、研究チームはみています。

画像提供:マオチン・シュー博士

研究チームは、勝者効果は「報酬に基づく学習」のプロセス(うまくいった行動を繰り返す)である可能性が高い一方、敗者効果は状況に応じた意思決定に関わるプロセス(無理に突っ込まない判断)であることが示された、としています。

負けを覚えて次に慎重になる——それを後押しする “安全運転モード” のスイッチが、この「コリン作動性介在ニューロン」だと考えられるのです。