高知県内の農作物を原料とするエッセンシャルオイルの工房が高知県日高村に誕生しました。オイルの抽出に使うのは自然のエネルギーだけ。日高村から世界へ、カーボンニュートラルな香りが広がっていくかもしれません。
仁淀川が流れのどかな風景が広がる日高村。この村に今年4月、エッセンシャルオイルの蒸留工房が誕生しました。名前は「和悠香(わゆか)」。電気やガスを使わずに蒸留する、カーボンニュートラルな工房です。

経営するのは、高知FORESTVISONの岡村征治(おかむらせいじ)さん。岡村さんは、去年、本山町に完成したバイオマス発電所で排出した二酸化炭素でパプリカを栽培するという事業に携わったことがきっかけで高知に移住してきました。
(高知FORESTVISON 岡村征治 代表取締役)
「すごくお互い安心できる関係ができて、高知の方と一緒にまた続けて仕事がしたいという思いに駆られて、じゃあ何ができるかなっていうことで」
エッセンシャルオイルは、県内産のショウガや文旦などさまざまな農作物から抽出します。この日はカクテルのモヒートなどに使われるハーブ「イエルバブエナ」を使いました。日高村で栽培されたものです。

オイルは原料を大きな鍋に入れて、蒸して抽出します。

(岡村さん)
「葉が柔らかいので機械に通らないので手作業で必死に細かくします」
原料を鍋いっぱいに入れ、2時間ほど蒸します。

鍋を熱するのはガスではなく、薪。地域の間伐材を利用しています。出てきた水蒸気を、工房までポンプを使わずに引いた山の湧き水で冷やし、水とオイルを抽出します。

(岡村さん)
「これが冷却水、山の水をそのままここをだどって出ているだけなので一切何にも触れず汚れもなく出てるので、そのまま流しても仁淀川を汚すこともない」
上部にうっすらと見えるのがエッセンシャルオイルです。作業開始からおよそ3時間かけて抽出されたオイルは、わずか5ミリリットルほど。手作業でていねいに抽出した、貴重なオイルです。

原料には、本来捨てるはずだった農作物も使用します。
(リポート:六車はなこ)
「高知市春野町のこちらの山では、かんきつ類のベルガモットが栽培されていますこのベルガモットの剪定した枝からオイルを抽出するそうなんです」

高知市春野町の農園。山の斜面を利用してかんきつ類を栽培していて、ベルガモットも400本ほどあります。
(岡村さん)
「(ベルガモットは)貴重ですね。全国的にも奈良に少しとか。まず聞くことがないくらい生産量は少ない。高知ならでは」
オイルを抽出するのは「実」ではなく剪定した枝や葉。本来は処分する部分から、「和悠香」らしい香りを抽出しています。

(岡村さん)
「実の香りとは少し変わっていて緑の香りに近いグリーンが出てくるイメージで、ベルガモットの爽やかさを持ちつつ落ち着いた奥の深い香り。ちょっと気品のある大人の香りができる」
家族で農園を経営している西込さんは、捨てるはずだった枝や葉に新たな価値が生まれたことに喜びを感じています。

(農園の持ち主 西込浩一さん)
「ここだけなら2トン車の3台くらいになっているけど、それを普段は人を雇って集めてもらう。集めてくれるだけでも生産者にとってはすごく助かるし、ベルガモットそのものの需要も上がっていくし、知名度も上がっていく」
地域の資源に新たな価値を見出し、自然のエネルギーだけでオイルを抽出する「和悠香」には、もうひとつ、大きなこだわりがあります。それは、香りの種類の多さです。香りで空間を演出するアロマ調香デザイナーの資格を持つ女性の協力を得て、和悠香ならではの香りを生み出しています。

(アロマ調香デザイナー® 尾﨑愛理さん)
「実際にブレンドするときに、10種類以上をブレンドします。ブレンドしたり、サロンで使用するとなったときに、選べる種類が少ないと、なかなか浸透していかないと思うので、まず種類の多さは一つこだわっていかなきゃいけないなと思うところです」

いま作っているのは22種類。今後はさらに香りの幅を広げ、自然豊かな高知ならではのこのオイルを、将来的には海外でも販売し、高知を、日高村を世界中の人に知ってもらうきっかけにしたいと考えています。

(岡村さん)
「地場産業を、東京や大阪や世界に向けて発信し続けていく。日高村や仁淀川流域の子が『わが村には和悠香がある』。利益が高くなくていい。ずっと続く事業をやっていく。まわりが喜んでくれる、農家や山の方との関係性も絆もつむぎながら、後世の人たちにずっと残していく。僕でも素晴らしいと思うし人がやってたら。ほんとにやってるんでね、きれいごとを堂々とやりますよ」

「和悠香」のある場所は目の前に仁淀川があってすばらしい環境ですよね。もともとは木が生い茂っていて、仁淀川が見えない状態だったんですが日高村の職員や地元の人たちの協力を得て木を伐採し、仁淀ブルーを一望できる工房が誕生したそうなんです。
そもそも国内で作られるオイルはまだ少なく、また、数多くの原料を集めなければならないことから手作業で多くの種類の香りを作ることはとても難しいそうなんですが、岡村さんたちの挑戦、応援したいですね。世界に誇れるオイルとなることをわたしたちも期待しています!
「和悠香」で作られているエッセンシャルオイルは、日高村の村の駅ひだかや、集落活動センター・ミライエで販売されています。以上、特集でした。