■“権力の私物化”をめぐる疑惑も・・・ 悲願の「憲法改正」実現できず

その一方、国民の間で批判が根強かった「特定秘密保護法」(2013年)や集団的自衛権の行使を可能にする「安全保障関連法」(2015年)などを、数の力を背景に成立させた。

国民を二分するような言動は、2017年の東京都議選の街頭演説で、安倍氏の退陣を求めて声を上げる一部の聴衆に対しても見られた。

安倍元総理
「こんな人たち、皆さん、私たちは負けるわけにはいかない」

現職の総理が国民の対立をあおるような発言をしたことに批判が広がった。これを受けて「批判する人を排除したり、そうした人に目を向けたりしないことではない」と釈明した。


長期政権による権力の私物化を指摘されることもあった。国有地が8億円以上も値引きされ、売却されていた森友学園の問題。学園が新設する小学校の名誉校長に、昭恵夫人が就任していたことから疑惑の目が向けられた。

安倍元総理
「私や妻が関係したということであれば、総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げたい」

この問題では、近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが公文書の改ざんを強要されたとしてうつ病を発症し、2018年に自殺している。

加計学園の獣医学部新設を巡っては、事業が国家戦略特区として認められた背景に、“総理の意向が反映されていたのではないか”として追及を受けた。

また総理主催の「桜を見る会」でも、後援者らを優遇していたという疑惑が浮上。“公的行事の私物化だ”と問題視された。


そして2020年8月、再び体調不良を理由に辞任した。一連の疑惑について、辞任会見でこう語った。

安倍元総理
「私は政権を私物化した、というつもりは全くありませんし、私物化もしておりません。まさに国家国民のために、全力を尽くしてきたつもりでございます」

在任中に、悲願の憲法改正が実現できなかったことについては・・・

安倍元総理
「憲法改正、志半ばで職を去ることは、断腸の思いであります」

そして2022年7月8日、安倍元総理は凶弾に倒れた。安倍政権時代の疑惑の真相も、今後の政治活動についても、本人の口からもう語られることはない。