厳罰化を望む遺族がいる一方、「修復的司法」という考え持つ遺族も
ラウル・ガラ・エンフトさん
「事件はここで起こりました」

ラウル・ガラ・エンフトさん(44)は妹をこの場所で失いました。美術大学に通っていた妹のクリスティーナさん(19)は2000年、同級生の男に逆恨みされて、およそ40か所を刺されて殺害されました。

エンフトさん
「犯人が目の前にいたら私は殺していたと思います」

禁固20年の罪で収容された男は、反省や後悔を口にすることなく3年前に出所したといいます。
エンフトさんは刑の厳罰化を求める活動を続けています。

エンフトさん
「殺人を後悔しない犯人には刑を科すべきです。極刑である死刑を殺人犯には与えるべきです」
厳罰化を望む遺族がいる一方で、テロリストに夫を殺害されたマイシャベル・ラサさん(72)は、死刑に反対の立場です。
ヨーロッパで死刑廃止が受け入れられている背景の一つに、「修復的司法」の考えがあると話します。「修復的司法」とは、加害者と被害者が直接話し合うことで、加害者の立ち直りと被害者の回復を目指す考えです。
ラサさん
「(罰より)対話の方が理解し合うために有効です」

ラサさんの夫はテロ事件が頻発していたバスク地方の議員として、過激派組織との融和を図ってきましたが、3人組のテロリストに銃殺されました。

ラサさんは絶望の淵を生きる中、事件から11年後、直接の謝罪を申し出た犯人と面会することを決断しました。
ラサさん
「事件の犯人が後悔し罪を認める。長期刑を与えるよりずっと価値があります」

ラサさんから前を向いて生きるよう背中を押された加害者のルイス氏(54)は…
ルイス氏
「私は彼女のおかげで変わることができました」

ルイス氏は2023年3月、修復的司法の啓発をしているラサさんとともに、自らも前に立つことを決意しました。
ルイス氏
「(修復的司法は)自分のような野蛮な人間も救ってくれます。ラサさんに会って、許しを請う必要がありました。そして皆さんにこの姿を見せることが必要でした」

夫の慰霊碑を作ったラサさんは、世界から「死刑」がなくなることを願っています。
ラサさん
「死刑はものすごく重い言葉です。欧州やスペインでは修復的司法があるので、死刑の復活は考えられません」