米への疑念が「独自の核武装論」に

強まる北朝鮮の核の脅威に直面する韓国では、“同盟国アメリカは守ってくれるのか”という懸念が顕在化している。北朝鮮が核・ミサイル能力を向上させ、アメリカ本土も射程に収める能力を持つ中で“自らを犠牲にしてまでアメリカがソウルを守るのか疑わしい。自ら核武装することが必要だ”という「独自の核武装論」だ。

過去も同様の議論はあったが、今年に入って尹錫悦大統領が「韓国に戦術核を配置したり韓国自身が独自の核を保有したりすることもできる」と発言したことで波紋が広がった。もちろん、東アジアでの核拡散を招きかねない韓国の核保有にアメリカは反対だ。

とはいえ「核武装論」の背景にある疑念は解消しなければならない。韓国政府によると1月末に韓国を訪れたアメリカのオースティン国防長官は、尹大統領から「韓国国民の懸念を払拭できる実効的で強力な拡大抑止」を求められ、「韓国国民の信頼を得られるよう努力する」と応じたという。

北朝鮮の脅威に向き合うのは日本も同じだ。そして日本は2022年12月、防衛力の抜本的強化に向けた安全保障政策の転換に踏み切った。反撃能力を保有、防衛費も増額する。政府は「アメリカによる拡大抑止の提供を含む、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する」としている。

韓国の“核武装論”と日本の「安保政策の大転換」とでは全く印象が異なるが、ある韓国政府関係者は私に、危機感の現れという点では“共通している”と指摘した。