ひとたび朝鮮半島有事となれば、韓国軍・在韓米軍だけでなく駐沖縄海兵隊を含む在日米軍、そして自衛隊も関与していくことは間違いない。北朝鮮という脅威を前に日米韓の連携の重要性が指摘される中、足元の日韓の最大の懸案、「徴用工問題」をめぐる両国の「現在地」はどこにあるのか。
沖縄駐留の米海兵隊が韓国で『武士道』訓練

北朝鮮との軍事境界線から近い韓国北部・京畿道で2月下旬、ある軍事訓練が行われていた。外国メディアで取材が許可されたのはJNNソウル支局だけだった。訓練名は「武士道ストライク」。韓国で「武士道」の名が付けられた訓練は聞いたことがない。
韓国軍ではなく在日アメリカ軍による訓練だと聞いて納得した。参加していたのは、沖縄の「キャンプ・ハンセン」から来た米海兵隊員90人。南北の緊張が続く“最前線”での訓練期間は1月下旬から約1か月間だという。今回公開されたのはごく一部だが、カメラの前で負傷者の救出や敵・味方に分かれた射撃訓練が行われた。
敵地への上陸作戦などを担うアメリカ海兵隊は勇猛果敢だと言われるが、その精鋭たちが沖縄ではなく韓国で訓練を行う理由は何なのか。臨場した中尉は参加した海兵隊員について「戦闘支援が主な任務だ」としたうえで、「頻繁には行わない実弾射撃の訓練が目的だ」と説明した。
「朝鮮半島有事に備えた訓練か」との問いには「我々は海兵隊なので戦闘のために訓練するだけだ。 朝鮮半島での特定の状況のためではない」と答えた。
ただJNNの取材に軍関係者は「朝鮮半島有事の際の上陸作戦は、こうした海兵隊の部隊が担う」と明かす。具体的には「北朝鮮東部の元山や韓国北西部の仁川などから上陸し、敵の後方支援部隊と本隊を遮断するのが任務になる」という。
北朝鮮の元山には軍港があり、2019年にSLBM=潜水艦発射弾道ミサイル「北極星3」型の試験発射が実施されている。仁川はソウルに隣接する。1950年の朝鮮戦争で北朝鮮にソウルが占拠された際、アメリカを中心とする国連軍が奪還に向け上陸作戦を行った地だ。
いずれも戦略上重要な拠点だが、「仁川上陸作戦」には在日米軍も投入された。訓練からは、朝鮮半島有事の際には在韓米軍のみならず、沖縄にいる在日米軍も関わるのだという現実が見えてくる。そして朝鮮戦争の時と同様、日本が関与することも間違いない。