ロシアがウクライナに侵攻して1年がたった。今回の戦争はロシア側からはどのように見えているのか。“プーチンの頭脳”ともいわれる極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏が、日本のメディアに初めて語った。3回シリーズの前編は「特別軍事作戦」が引き起こしたロシア社会の活発な動きについて聞いた。(中編後編を読む)

「私たちは欧米との戦争に入った」失望から長期戦への備えへ国民に変化

ーー特別軍事作戦が始まってから1年が経とうとしています。戦況やロシア国内の状況についてご意見を伺いたいです。

この特別軍事作戦は軍事的な側面で、ある意味で失望であると思います。ロシア社会の様々な層にとって失望であると思います。ロシア国民の圧倒的な大多数は愛国者であり、特別軍事作戦を支持しています。しかしその進捗、期間、損失、そして2022年の秋に撤退せざるを得なかった状況は社会を悲しませたのです。

素早く勝利が出来なかったことは、社会を失望させたということを強調したい。特別軍事作戦が始まった時、国民は準備をしていなかったし、それが長引いた状況になおさら準備をしていなかった。

今は戦況においてもロシア国民の心においても変化が起きています。社会は長い戦争に向けて変化しています。ウクライナとの長い戦争だけではなく、まれな例外を除いてキエフ政権を支持している西側諸国との(長い戦争)です。

ロシアの親欧米型リベラルエリートも大きく失望しました。このエリートは国民にほとんど支持されない。国外に逃げたエリート、経済的なエリート、つまり、オリガルヒや高官等、欧米とつながっているエリートのことです。
 
戦争が続いているこの1年間で欧米との関係は完全に破綻しました。特別軍事作戦に関する考え方に関係なく、ロシア人は欧米で資産を没収されてしまう。自分の将来を欧米で築きたいという人も失望しました。

なので、全体的には失望です。この1年で社会も軍人も、去年の秋の市民投票の結果、ロシアに再統合された領土にいる人たちも長期戦に備え変化している点が極めて重要です。
 
私たちは力や資源が底をついたわけではなく、ヒステリーを起こしていない。ロシア社会はかろうじて第3次大祖国戦争に適応しようとしている。第1次大祖国戦争は1812年のナポレオンとの戦争で、第2次大祖国戦争は1941年~1945年の戦争です。

私たちは欧米との戦争に入った、ということを国民が理解し始めた。これは簡単に勝利できない大規模な戦争であり、勝利するまでは欧米との交渉、まして操り人形のウクライナとの交渉はあり得ないということを分かっている。