和平交渉は敵の“プロパガンダ” 一般国民は従来通り戦争支持
ーー特別軍事作戦は国民戦争になったと伺いました。一方、外国エージェントであるレバダセンターの調査結果によると、和平交渉の開始を支持している人が増加しています。これは国民戦争であるということをすべての人が分かっているのでしょうか?
ロシアにいるすべての外国エージェントは敵のプロパガンダを発信しています。彼らは単に海外の資金提供を受けているのではなく、敵の味方なんです。外国エージェントのデータを引用することは敵のプロパガンダを引用することです。
第二次世界大戦を思い出してください。「日本はもう負けたので降伏しなさい」とアメリカ人が呼び掛けるが、「私たちは最後まで戦う」と日本の侍が答えます。両者において客観的な情報は存在しないというということが明らかです。戦時下でのプロパガンダとは、両者が正反対のことを呼び掛けているという現象です。
レバダセンターはおっしゃるとおり外国エージェントなので、プロパガンダを発信しており、他の外国エージェントやまだ外国エージェントとして認定されていないものと同じように、ウクライナの心理的作戦センターが仕掛けるような作戦を実施しています。
私は彼らに対抗し、ロシアのプロパガンダを発信するつもりはない。私は客観的な情報を提供したいです。当然ながら、社会全体が国民戦争だと思っていない。欧米に対抗するために全国民が団結したわけでもない。勝利する前の段階で和平交渉を始めるのは時期尚早だと理解していない人もいる。和平交渉の土台となるような、ロシアが満足できる勝利を手に入れるべきだと理解していない人もいます。
しかし、国民の大多数はそれを理解しています。大多数です。社会的地位、年齢、性別、居住地等の要因を考慮しないといけないのでその大多数の詳細には触れないが、世論調査は狙える結果を手に入れることが可能だと社会学博士として断言できます。
社会全体が戦争に反対している結果も、戦争を支持している結果も得られます。ターゲットを学術的なルールに基づいて定めたとしても、様々な要因の影響で結果が異なります。世論調査で正確な結果を得ることが不可能です。
世論調査はプロパガンダです。敵である外国エージェントとウクライナのプロパガンダ、もしくはクレムリンのプロパガンダです。どちらも正確ではありません。私は状況をより正確に説明したいです。
第一に、直近30年間の間に、国民と政府の意見が食い違っています。人口の10~15%を占めるエリートは親欧米派で、71~73%を占める一般国民は1990年から2022年までの間に反欧米派でした。
つまり、政治エリートは親欧米派で、一般国民は反欧米派です。これで大多数をどのように定義すればいいのか?政権を握るエリートは親欧米派で、過半数を占める一般国民は反欧米派です。このような対立(=エリートvs一般国民)は今も続いています。
71%を占める一般国民は国民の普遍的な中核として従来通り勝利をしたいと思っています。勝利とはウクライナ全土の制圧だと思う人、西側諸国への進軍だと思う人、今の4つの地域にオデッサ、ハリコフ、ニコラエフ州をプラスしたノヴォロシアの解放だと思う人、ウクライナ人からすでに解放した4つの地域だけで満足している人、勝利の定義は千差万別ですが、方向性は同じです。
では支配階級はどうなったのか?支配階級はショックを受けました。その70%が親欧米派なのに、(開戦後)欧米と対立したからです。この状況下で意識改革が行われます。一般国民は従来通り勝利を支持しているのに、特別軍事作戦開始前に支配階級に属する人に「特別軍事作戦をすべきか」と聞いたら、その大多数は「いいえ、すべきではない、何でもいいので避けたい」と答えていたと確信しています。
しかし彼らは意見を求められることはなかった。プーチンは自分の判断で特別軍事作戦を始めたが、支配階級は一般市民と同様、勝利を支持せざるを得なくなった。今この変化は本格化しました。支配階級は抵抗しているが、すでに追い込まれてしまった。外国エージェントとして認定されすべてを失うか、国民戦争を行う一般国民の味方になるかです。
1億4千万人のロシア国民の中で、状況を理解していない、納得していない人も少なくないので、彼らはいろんな発言をします。戦時下であってもロシア社会はオープンなままなので、異なった意見を持つ数十人、数百人、数千人を見つけることも可能です。
私はここで議論をしたいわけではなく、現状を説明しているだけです。一般国民は戦争を支持しているが、エリートは当初は本格的に反対していたが、今は支持せざるを得ません。そのため、外国エージェント達と彼らに共感している一部のエリート以外は(ロシアが)勝利をしていない状態の和平交渉を望む人がいません。そういった発想(勝利していないのに和平交渉をする)自体が存在しないのです。