暴力団関係者が酒を飲み、チンチロリンに興じ・・・無法地帯の外野席

ここで時計の針を少し戻そう。

1998年の「新井将敬事件」で新井の弁護人を務めた猪狩俊郎は、これを最後に特捜事件の弁護から一線を引いた。

以後は、かねてよりライフワークとしてきた「安全な社会の実現」、すなわち「反社会勢力」や「暴力団」の排除運動に軸足を移していく。

当時、新たな社会問題として浮上していたのが、プロ野球を取り巻く反社会勢力の存在だった。なかでも問題視されていたのが、球場の外野席を事実上支配していた悪質な「私設応援団」である。

その背後には、国内最大の指定暴力団の関与が取り沙汰されていた。

「甲子園球場」や「東京ドーム」の外野席コンコースでは、刺青を入れた上半身裸の暴力団関係者が昼間から酒を飲み、チンチロリンに興じ、客に対して無許可で応援グッズを販売する光景が日常化していた。「東京ドーム」では、私設応援団が外野自由席を実質的に占拠し、一般客に高値で転売する不正行為も常態化していた。

そもそもプロ野球の応援文化には、ファンが組織する「私設応援団」が100団体以上存在し、球団側から応援旗や楽器の持ち込み、優先的な座席の割り当てといった“特権”が与えられていた。この“特権”をめぐる応援団同士の勢力争いが、結果として暴力団の介入を招いていたのである。

2001年ごろになると、こうした横暴に耐えかねた一般ファンから、警察への相談が急増した。

「健全な応援団が恐怖にさらされながら観戦している」
「観客には安心して野球を観る権利がある」
「外野席から家族連れが姿を消している」

事態を重く見た警察庁も、ようやく本腰を入れ、球場内外での不正行為に対する本格的な取り締まりに乗り出す。