全ての農家を守るべきなのか?守るべき農家とは?

 ここで問題になるのが、コメは増産すべきか?減反すべきか?という議論。一般的には「増産して価格が下がると農家が困る」と言われますが、山下氏は「守るべき農家とは誰なのか?」「全ての農家を守るべきなのか?」と問題提起します。

 日本の農家の約半数は耕地面積1ha未満の小規模農家ですが、耕地面積全体の占める割合はわずか8%です。一方、耕地面積10ha以上の大規模農家は全体の6.5%に過ぎませんが、耕地面積全体の占める割合は63%にのぼります。

 つまり、仮に約半数の小規模農家を守ったとしても、耕地面積で計算した場合、わずか8%分しか守れないことになり、価格も下がらない可能性があるのです。

 それでも小規模農家を守ろうとするのは、彼らが「選挙の票田」となっているから。耕地面積はわずかであっても、戸数では50%以上を占めているという現実があります。

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 なお、山下氏は、「10ha以上の専業農家であれば60kg=1万2000円でも経営が成り立つ」と言います。例えば、耕地面積10ha~15haの場合の年間所得は500万円で、35ha以上では1億円以上になるそうです(山下一仁氏試算)。

 <農家の規模別にみた年間所得>
 ▼1ha未満     数十万円
 ▼1ha〜5ha   100万円〜200万円
 ▼10ha〜15ha 500万円
 ▼20ha以上    1000万円以上
 ▼35ha以上    1億円以上
 (山下一仁氏試算)

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 一方で、小規模農家を守るべきだという意見も。折笠氏は「零細農家は農業のインフラを支えている」と指摘します。例えば、水の管理やあぜ道・農地の維持などを担っていて、零細農家がいなくなると、大規模農家の生産性が低下する可能性もあるそうです。

 折笠氏は「長期的には国内の生産力維持のため増産は必要」、山下氏は「コメ価格を下げるには増産=供給量を増やすことが本来必要」として、2人とも増産を主張しています。その上で山下氏は「増産して価格が下がった場合、農家に直接支払う補償を」と述べています。