小林選手の成長について高橋尚子さんが河野監督に迫る

高橋さん:あの高速ピッチがこれから上を目指す為に、更に速くすることは中々厳しくなるのかなと思った時に歩幅を広げるといったところ?

河野監督:歩幅を広げるというよりも、可動域が広がれば自然と広がると思うんですよね。体幹を更に動かせる余裕はまだあると思うので、それがいわゆるピッチとスライドが連動して動くようになれば、5000mなり、10000mも速くなってくると思うので。それが速くなってくればマラソンもそれに比例して、速くなるんじゃないかなと思っていますけど。

1番成長したのはマラソンを知ったということじゃないですかね。今まで一生懸命やるだけが彼女の持ち味だったのが、トレーニングの中身だったり、何でこのトレーニングをやるかという目的は説明するようにしているんですけど、それを理解して自分のものにしたという「マラソンのIQ」が上がったっていうことが伸びた一番の要素。でもこれからは体のところとか、もっと繊細に動きのところを突き詰めていくという余地が残っているので、そこは楽しみにしたいと思っていますね。

高橋さん:今まで育てた選手の中では、犬伏孝行さん(元男子マラソン日本記録保持者)や伊藤舞さん(15年世界陸上北京大会女子マラソン7位)、日の丸を背負う選手がいっぱいいましたけれど、その中でも小林さんの特別なところは?

河野監督:この1年半でここまで到達するのはすごい。まだ24歳なのでね。ここからピークと言われる28~30歳ぐらいまで、どういう風に成長していくのかなという楽しみ。今私の中で考えているマラソンのトレーニングの本当に集大成になるんだと思うんですけど、私の年齢からすれば。そういったものを彼女と一緒にやっていけることが、私にとってもやりがいがあるかなとは思います。

高橋さん:逆に何も知らなかったから、吸収力がすごく高いとか素直に受けられるというのは他の選手と違う部分を感じたところはありますか?

河野監督:固定概念がなかったのが良かったですよね。やっぱり中学、高校、大学とその経緯を辿ってくると色々な指導者の中で、自分の陸上競技に関する考え方というのが出来上がってくるわけですよね。でもそれが彼女の場合は全くないので、私が話してることも新鮮だったと思うし、あまり疑問に思わず「やってみようか」という感覚になれたと思うので、これは私としても新たな境地というか、指導者としての新たな経験を積ませてもらったなと思っていますね。

高橋さん:この1年半という期間でこれだけ早い伸び率。でもまだまだある意味期間としては1年半だけじゃないですか。今やっていることって河野監督のやらせたい練習のどのくらいですか?

河野監督:ここまでは何もない状態で吸収して成果を出したけど、ここからはサークル出身者じゃなくて「世界陸上7位の選手」になる。それはさらにプレッシャーもあるだろうし、いろんな自分の考え方も出てくると思うので、それと私が考えている事がうまくマッチングできるかどうか。ここは私が彼女の成長、いわゆる成績の成長じゃなくて、マラソンを自分で知ってきた成長とどう付き合えるかだと思いますね。