物価高対策と財政規律のジレンマ

ーーやっぱり喫緊の問題は「物価高対策」ですよね。その中で高市さんの積極財政。いろいろな意見がありますが、どうお考えになっていますか。

元衆議院議長 伊吹文明氏:
物価が上がるっていうのは二つのケースがあってね。一つは「景気が良くなって消費が伸びて、設備投資が伸びて、有効需要がどんどん増えるから物価が上がってくる」っていう、ある意味いい物価上昇。それから、人手不足で給与が上がってくる。国民も「ワークライフバランスが…」とか言って働きたいけれども、なかなか働けないような風潮になってるって言う人たちもいるんですよ。

何より、安倍さんのときは、1ドル110円だったんですよね。だけど今150円でしょ。だから輸入物価だけでも110分の150倍上がってるわけ。これが最大の原因なんですよ。だから、輸入物価をいかに抑えるかっていうことになると、やっぱりこれは円高の方へ持っていかないといけない。

円高の方へ持っていくためには、やっぱり金利が少しずつ日本で上がってきて、円を持っていればドルよりもいいっていう状況を作らないと円の価値が上がってこないんですね。もう一つは、借金が多い会社の株が上がらないのと一緒でね、やっぱりある程度、国債の増加を抑制していくっていう政策。だから、この円高誘導しようということになると、今の表現で言えば、積極財政っていうのはちょっと逆方向なんですよね。

ーーなおかつ高市さんは日銀の政策に対して色々言いたそうですよね。

元衆議院議長 伊吹文明氏:
だけどね、新しい財務大臣はやっぱりその辺は非常に慎重にね、記者会見では日銀の独立性を侵さないような表現を取ってますから。少し様子を見てね。そして、積極財政って言うけれども、維新と自民の合意の中で、お互いに相いれないことがやっぱりたくさんあるんですよ。例えば、食料品に対しての軽減税率。これなんかは最大のそのバラマキなんですね。

だから、本来はやっぱり所得制限をつけて、困ってる人たちに給付をするっていう方が物価対策としては、私は効果があると思いますけども、給付はしないっていうことをもう決めちゃってるし。例えばガソリン税を減税するっていうのも一見いいように思うんだけど、価格が下がると今度は物を買う意欲が増えてくるんですね。そうするとガソリン価格が、需要が増えてくると、税金は下がったけど、流通価格が上がってくるっていうことも起こってくるんでね。この辺は自民と維新でよほど慎重にこれから協議をして決めていってほしいと思いますね。

ーーさっきバラマキとおっしゃいましたけど、やっぱりどの項目とっても財源が必要。ここら辺はいかがですか。

元衆議院議長 伊吹文明氏:
積極財政とは言いながらね、なるほどなかなか高市さんも配慮してるなと思ったのは、片山財務大臣にわざわざ「補助金等、租税特別措置の再検討担当」なんていうのをつけたでしょ。租税特別措置でも本当に役に立ってるものがあるのか。これを、いや役に立ってないからやめようよっていうことになると、税収が増えるでしょ。それで補助金でも、バラマキ補助金だとか不公平な補助金をカットすれば、歳出の財源が余ってくるわけですよ。

だからそういうものを使ってね、新しい例えば施策の財源にしようっていうことを考えてるんだなと。だから積極財政といっても、常に赤字国債を発行して何やってもいいっていう感じではないんじゃないかなと僕は期待してるんですけどね。