「言論の自由」の危機に立ち上がった人々
事件を奇貨として、自らに批判的なキンメル氏の「口封じ」に成功したかに見えたトランプ氏。しかし、人気番組の放送中止という異例の事態に、アメリカが伝統的に守ってきた「言論の自由」が危機に瀕していると感じ、立ち上がる人々がいた。
まず、巻き起こったのが政権に屈して番組中止を決めたABCテレビへの抗議活動だ。
ニューヨーク市内にあるABCテレビとその親会社であるウォルト・ディズニーの社屋の前では脚本家の組合員らが集まり、キンメル氏の番組の放送再開を求めて抗議活動が行われた。
参加者の1人は、ニューヨーク支局の並木航支局長の取材に答え、「コメディは民主主義にとって大切です。道化師は物事をありのままに伝えます。王様に『あなたは裸だ』と言えるのは彼らだけなのです」と話した。
ディズニーに対する抗議活動はSNS上で一般の人々にも広がった。#BoycottDisney=「ディズニーをボイコットしよう」とのハッシュタグが広がり、展開している動画配信のディズニープラス、傘下のHuluなどを解約する動きが出た。
また、およそ400人のハリウッド俳優らは番組中止について「言論の自由に反する」と抗議する公開書簡に署名。ロバート・デ・ニーロさん、トム・ハンクスさんら有名俳優が名を連ねたほか、ディズニー傘下のマーベルの常連出演者のナタリー・ポートマンさんらも加わり、ディズニーの業績へ影響が出るとの見方から株価が大きく下落する展開となった。
さらに、政界からも揺らぐ「言論の自由」への危機感が与野党を超えて示された。オバマ元大統領がSNS上に「これこそ憲法修正一条が防ごうとした政府の強制そのものだ。メディア企業は屈するのではなく、立ち上がるべきだ」と投稿。
また、共和党の保守派として知られるテッド・クルーズ上院議員は、「キンメル氏の降板は歓迎だ」とする一方、FCCのカー委員長による圧力は“民主党に政権交代すれば逆のことを行われる可能性がある”として、「地獄のように危険だ」と述べた。














