保守勢力が「憲法改正」で手を握る~不安定な民主党政権に懸念~ 

密着取材を始めた2009年は、民主党が政権交代を果たした年でもあった。民主党政権誕生の瞬間は、村山元総理の自宅でインタビューをしながらテレビを見ていた。翌年にかけて自宅で何度もインタビューをする際にも、国会中継を見ながら話を聞くことが多かった。

印象に残っているのは、2010年の通常国会の会期中だった。国会中継を見ながら話を聞いていると、なかなか安定しない民主党の政権運営に対して、そう遠くない未来への懸念を口にした。

「僕はねえ、今一番心配しているのは、政局が安定すればいいんですよ。今の民主党政権で安定すればね。今のような状態だと安定しないわね。そうすると、政界再編が起こってくるんですよ。

安定政権をつくっていくためには、ある程度かたまった力を持った党でつくる必要がある。その時に、保守がもういっぺん手を握って、連合しようじゃないかという動きが起こらんとも限らんよね。そういう問題が起こった時、保守の政権の基調は憲法改正だと僕は思うな。

僕も日米関係が大事だっていうのは否定しませんよ。(村山談話は)現状の日本を肯定した上で、世界に向かって、アジアに向かってあの宣言を出すということだからね。アジアから孤立した日本なんて、ただの島にしかすぎんのやから。日本が軍事大国になるとかね、また戦争するとかね、そんなことは一切認めないという談話だからね。問題は、歴史認識ですよ」

村山元総理は、いつでも自らの言葉で語っていた。取材メモに残っている言葉の数々は、今でも重い意味を持っている。

<執筆者略歴>
田中 圭太郎(たなか・けいたろう)
ジャーナリスト・ライター

1973年生まれ。大分市出身。
大分放送で19年の勤務を経て、2016年からフリーランスで活動。
休刊した「調査情報」で執筆し、「調査情報デジタル」では
<シリーズ SDGsの実践者たち>などをライターとして担当。
ジャーナリストとして、雑誌・WEBに大学をめぐる問題、教育、社会問題など幅広いジャンルで執筆している。
著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)『ルポ 大学崩壊』(筑摩書房)がある。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。