6区・松田の区間賞で2位と過去最大差の勝利に
優勝は5区で確定したが、6区の松田の走りでクイーンズ駅伝への期待が一段と大きくなった。松田は前後に選手がいない単独走となったが、自分のペースをしっかり刻み、21分42秒で区間賞を獲得。鈴木監督が「2月にマラソンで自己記録を出しましたし、練習も安定している」と評価する走りをいかんなく発揮した。
従来の大会記録は、21年大会の資生堂が出した2時間16分41秒。5区終了時通過タイムの比較では三井住友海上が38秒後れていたが、松田の快走で大会記録を48秒も更新した。2位とのタイム差の2分11秒も、資生堂が大会新を出したときの1分21秒を上回り、プリンセス駅伝史上最大差となった。
「私がイメージした区間配置ができましたし、選手同士もこの子が走ったら強いだろうな、という思いがあったと思う。その2つが一致したら力を発揮すると思っていました。やっと思い描いている駅伝ができましたね」
クイーンズ駅伝の区間配置は、かなり多くの選択肢を持つことになった。樺沢は前述のように1区か3区に入るだろう。今回1区で合格点の走りをした永長がクイーンズ駅伝でも1区なら、樺沢がエース区間の3区で他チームのエースと勝負することになる。樺沢が1区の時は永長と兼友で、状態の良い方が3区に回る。その時は1、2区の樺沢&西山で、目標とする順位に入るための貯金が十分にできる。トップを走る可能性もあると思われる。
10000mで30分45秒21の日本歴代3位(学生記録)を持つ新人の不破聖衣来(22)も入社。今大会はケガの影響で控えに回ったが、クイーンズ駅伝に間に合えば区間配置の選択肢がさらに増える。
プリンセス駅伝で大会新を出した資生堂は、その年(21年)のクイーンズ駅伝で2位に入った。資生堂には日本代表経験者と、その後日本代表に成長する選手が計4人もいた。プリンセス駅伝の大会記録を更新しても、資生堂と同じ成績をクイーンズ駅伝で出せるわけではない。鈴木監督もクイーンズ駅伝の目標を「クイーンズエイト(翌年の出場権が与えられる8位以内)」に置いている。「駅伝は何が起きるかわかりません。欲はかきません」と慎重だ。
しかし駅伝は、良い方向で“何が起きるかわからない”こともある。プリンセス駅伝のように指導者と選手が“イメージした通りの駅伝”ができれば、三井住友海上も優勝争いに加わることができるはずだ。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)