5区・樺沢の快走の意味は?
3区(10.7km)では伊澤菜々花(34、スターツ)の爆走があり、兼友良夏(24、三井住友海上)が抜かれてしまったが、粘って4秒差で4区に中継した。4区(3.8km)のカマウ・タビタジェリ(25)は現メンバーでは社歴が最も長く(19年入社)、駅伝も熟知している。スターツのワングイ・エスターワンブイ(22)との接戦を制し、最後は4秒のリードで5区(10.4km)の樺沢にタスキを託した。
そしてパリ五輪5000m代表だった樺沢の快走が、優勝への決定打となった。1km過ぎでスターツ・西川真由(28)に追いつかれたが、3km手前で引き離すとそれ以降は独走に持ち込み、6区(6.695km)への中継ではスターツに1分19秒の大差とした。
「自分のリズムで走っていて、(スターツを引き離したのは)全然わかりませんでした。ただ前半が結構向かい風で、上り下りもあってリズムに乗れないまま5、6kmまで行ってしまって。タイムも遅くてやばいと思いながら走っていましたが、最後の2、3kmは(1km毎)3分10秒を切るまで上げられました。しかし全体的には良いリズムを作ることができなかったので、そこが反省です」
区間記録には9秒届かなかったが34分11秒で区間賞を獲得。区間2位の小林香菜(24、大塚製薬)にも17秒勝った。レース展開的には樺沢の走りで、三井住友海上の勝利が確定した。
レース展開にも関わってくるが、樺沢を5区に起用できたこと自体がチームにとって大きかった。本来であれば1区か3区が、トラック日本代表のスピードを生かす起用法だろう。だが今回のプリンセス駅伝は、「他に前半区間を試したい選手がいる」(鈴木尚人監督)という理由で樺沢が5区に回った。前回区間賞を獲得した6区の案もあったが、樺沢本人が5区を志願した。
「去年は2位だったので、ゴールテープを切りたい気持ちも大きかったのですが、調子がまあまあ良かったので、長い区間を走ってチームに貢献すべきかな、と思いました」
1区は三井住友海上が得意とする区間で一昨年は樺沢が区間賞、昨年は松田が区間4位。その区間に今年は新人の永長里緒(23)が起用され、区間賞選手から13秒差の区間5位と健闘した。「10秒以内でつなぎたかったのですが、ギリギリ設定範囲内です」と自身で合格点を出せる走りができた。鈴木監督がレース前に想定した「1区で10秒とかその前後の差で2区に渡せれば、今の西山ならトップまで行ける」という展開に持ち込んだ。
2区終了時にスターツに大差をつけていたことで、3区の兼友が抜かれても4秒差でつなぐことができ、4区のタビタジェリがトップを奪い返した。樺沢が5区を志願したことで、チームとしても新しい勝ちパターンを構築できた。