「競技者として第一線を退く」世界陸上に向け最後の挑戦

寺田選手
「今シーズンをもって、競技者として第一線を退くことを決意いたしました」

2025年4月、第一線を退くと表明した寺田明日香選手。決断に至った理由の1つをこう表現した。

寺田選手
「闘志を出すのが難しくなった。闘志を出すためには怒り方面にいかないといけなくて。でも他の選手たちに怒りがあるわけでもないし、自分に対しても怒るわけではないし。我を出すのが難しくなった」
「年齢を重ねて、まわりも見えるようになってくる。そうなってきたときに、『自分だけ、自分のわがままを通す』というのが、逆に難しい」

最後の目標として掲げたのは、東京で9月に開催される世界陸上だ。標準記録「12秒73」を切れば出場に大きく近づくが、なかなか結果が出ない。

迎えた3戦目。この日は陸上を始めた果緒ちゃんの試合があるため、2人は残った。出発前、寺田選手からこんなことを言われたという。

夫・峻一さん
「応援に行くことが、『彼女にとってパワーになっていない』みたいなことも本人からきくので、僕らが行くことによってプレッシャーもあるんじゃないかな」

峻一さんは、モニター越しにレースを見守った。

夫・峻一さん
「いけいけいけ!よし!自己新やん!」

今シーズン初優勝。参考記録ながら、自己ベストの快走を見せた。

夫・峻一さん
「いない方がいいのかな(笑)娘が陸上を始めてから初めての勝利じゃない?いい背中を見せてくれたんじゃないですかね」

7月、世界陸上をかけた大一番の日本選手権。ここで標準記録を突破し3位に入れば、代表内定となる。アキレス腱の痛みを抱える中、決勝まで勝ち進んだ。

客席では家族が見守っていた。

結果は6位。最後まで笑顔で駆け抜けた。陸上の短距離選手のピークは一般的に20代とされる中、35歳の寺田選手は日本のトップレベルで戦い続けてきた。

寺田選手
「一緒に楽しんでくれてたらいいなってずっと思っていたので、2人がそういう風に思ってくれていたら、復帰してここまできてよかったなと思います」

寺田選手
「楽しかった?」

娘・果緒ちゃん
「楽しかったよ」

寺田選手
「じゃあよかったです。それが1番です」

世界陸上には届かなかった。最後の挑戦を終え、SNSにこう投稿した。

寺田選手のSNS
「悔しくない訳ではないし、悲しくない訳でもないけど、母という役割があったから強くいられた」

寺田選手
「子どもがいたからなのかなと思っているので、本当に産前の私と産後の私だと、圧倒的に産後の方がポジティブな考えを持てるようになったと思います」
「いろんな方々の支えがあったからだし、一緒に楽しんでくれた家族がいるからだし、ありがたいなと思います」