陸上競技に再挑戦 母としての葛藤
2019年、ついに陸上競技に復帰した。ラグビーを経験したことで、走る楽しさに改めて気づけたからだった。復帰直後、寺田選手はいきなり結果を出した。

日本記録13秒00(当時)を、19年ぶりに更新する快挙だ。母親になったことが、アスリートとしての成長に繋がったと言う。
寺田選手
「1番は時間の工夫だと思うんですけど、朝はみんなのごはんの準備とかしなければいけないですし、自分のことだけ考えればいいってことじゃないので、それはすごく大変かなって思いますけど」
この日、午前中はジムでトレーニング。午後は走り込みの練習。丸一日練習した後は、スーパーで食材を買い出しし、帰宅して夕食を作る。

引退前は基本、週に6日練習し、休みは1日だけというスケジュールだった。だが、陸上に復帰してからは、午前と午後の2部練習を取り入れ、休みを3日に増やした。そうすることで、家族と過ごす時間や、身体の回復に充てられるようになった。
寺田選手
「限られた時間の中で、どう効率的に動くかっていうのもすごく考えますし、それが逆にいいかなって思うんですけど。練習できない日もあって、天気がよかったら、『今日練習だったらよかったのに』と思ったりとか、『早く走りたいな』と思う日があるので。それは1回目の陸上選手の時と違う心境、心の変化かなと思います」
2021年、念願の東京オリンピックに出場。日本人として21年ぶりとなる、準決勝進出を果たした。
夫の峻一さんは保育園の送り迎えや、習い事に付き添うなど、育児を手分けしてきた。寺田選手の成長をこう語る。

夫・峻一さん
「人生経験を積んでたくましくなったと思いますし、元より速くなるというのは信じられないというか。奇跡に近いなと思いますね。引退した時は、オリンピックに出られるなんてまったく思ってなかったから」
しかし、今も出産・育児との両立を諦める女性アスリートは多い。
中学・高校・大学生を対象に、2025年に行われた調査では、「社会人になっても競技を続ける」と答えたのは、男性が10%。それに対し、女性はわずか1%だった。

【現在もやっているスポーツを続けるか】
▼男性
・引退を待たずに辞める:11.0%
・引退まで続ける:56.0%
・進学先の部活動で続ける:15.0%
・進学先のサークルなどで続ける:3.0%
・就職後もプロ・社会人アスリートとして続ける:10.0%
・就職後、サークルなどで続ける:5.0%
▼女性
・引退を待たずに辞める:13.0%
・引退まで続ける:66.0%
・進学先の部活動で続ける:6.0%
・進学先のサークルなどで続ける:7.0%
・就職後もプロ・社会人アスリートとして続ける:1.0%
・就職後、サークルなどで続ける:7.0%
SMBC「SOLUACTION!プロジェクト」調査より(男女各100人ずつに調査)
続けない理由のひとつとして、約8割が「結婚や出産・育児などのライフステージとの両立が難しそう」としている。