■「南シナ海問題についてどこまでつっこんだ議論をおこなったのか?」
カンボジア・フンセン首相との会談でもウクライナ情勢は多くの時間が割かれた。カンボジアは国連総会で日本など141か国と共にロシア非難決議を提案した国のひとつであり、この問題についての危機感は共有された。そして、南シナ海問題について岸田総理は共同記者発表で「南シナ海問題や北朝鮮への対応における緊密な連携でも一致いたしました」とその他のトピックと共に、簡単に触れる程度だった。あまりに気になり、全日程終了後、岸田総理に「南シナ海問題についてどこまでつっこんだ議論をおこなったのか?」と問うたところ、
「カンボジアは“開かれたインド太平洋(FOIP)”には極めて前向きで熱心な国だ。もちろん中国との関係等もあるのかもしれないがASEANとして、法の支配に基づいて地域の平和と安定を、築いていくこうした考え方は、カンボジアをはじめ多くの国々が、共有しているんではないかと思う」
などと総理は淡々と語った。総理の口からカンボジアがFOIPについて「極めて前向きで熱心な国」と発せられたことに驚いたが、事実FOIPについてカンボジアがASEANの中でもっとも早く賛同をしたことから日本政府としては、カンボジアとこのトピックについてはさほど重要視せず、それほど時間も費やしていないことが窺えた。果たしてFOIP実現に向け、本当に熱心な国へと変容したのか、今後のカンボジアの動向を注視したい。
■G7首脳会談へ「アジアの代表として国際社会の連携を実現する」決意
今回の外遊の感想を聞かれた岸田総理は、「両国とも、まず力による現状変更、一方的な現状変更、これはいかなる地域においても許してはならないということは確認できた」ことをまず強調した。そして来る23日からベルギー・ブリュッセルで開催されるG7首脳会合への出席の意向を表明し、「アジアの代表として日本は状況をしっかり報告していく。こういったことによって、国際社会の連携を実現していく。その一つの取り組みが今回の2か国との意見交換であった」と述べた。
今年は6月までに日米豪印の枠組み「クワッド」が日本主催で行われ、来年にはG7の議長国を日本がつとめる。ロシアのウクライナ侵攻をめぐる日本の危機感を世界に伝え、存在感がアピールできるか、岸田総理の指導力に世界の目が注がれる。
政治部官邸キャップ
室井祐作