■岸田総理の危機感「ウクライナ侵略を他人事ととらえてはいけない」
インド・カンボジアに出発する政府専用機の前で岸田総理が冒頭に発した言葉。これが結果的に両首脳との会談を通じて、最も強く訴えたことだった。
岸田総理「ロシアによるウクライナ侵略、これは、国際法違反の暴挙であり、力による一方的な現状変更をインド太平洋では許してはならない」
岸田総理は国会答弁でも常々、このロシアへのウクライナ侵略については「他人事としてとらえてはいけない」と繰り返してきた。名指しこそしないが、念頭にあるのが中国であることは間違いない。尖閣諸島、台湾有事を抱える日本にとって、ウクライナ情勢は「あすは我が身」として強い危機感を抱いている。
今回外遊先として選んだインド、カンボジアではロシアの軍事行動について結束して、反対していくという認識の共有はもちろん、大国・中国を隣国に抱えるこの日本の危機感についても、どこまで共有できるかが焦点だった。
とりわけ、インドは長年、武器調達をロシアに頼ってきたため、伝統的に友好関係を維持している。先の国連総会でのロシア非難決議もインドは棄権するなど、ロシアに配慮する姿勢をとってきた。3月3日に行われた、日米豪印の枠組み「クワッド」の電話首脳会談でも、ロシアを非難することでの一致は見られなかった。今回、インドとはロシアの軍事行動について、どこまで危機意識を共有できるのか。政府関係者は出発前、「成果はさほど期待できないかもしれない」と不安を口にした。そしてカンボジアも同様、中国との経済的な結びつきが非常に強い。東シナ海、南シナ海の海洋進出を阻止するためにカンボジアと結束できるか、不透明だった。