利上げは遠いと円は一時150円台に
市場は、植田会見を「思ったよりハト派」、「利上げは遠い」と受け止めました。植田総裁が「為替が物価見通しに直ちに影響するとは見ていない」と発言したこともあって、31日昼頃に1ドル=148円台だった円相場は、記者会見が進むにつれて円安が進み、ついに4か月ぶりとなる1ドル=150円台まで円安が進んだのです。
為替市場では、今年4月にアメリカの関税政策の先行き不透明感から、一時139円台まで円高が進み、過度な円安の修正と、それを通じた日本の高いインフレ率の抑制が、期待されていました。再び150円台の円安が定着するような事態になれば、高い物価上昇が予想外に長引くリスクが出てきます。
日銀の物価見通しは大外れ
そもそも日銀は、足元の物価高を軽く見てはいないでしょうか。今回の決定会合にあわせて発表された物価見通しでは、今年度の物価上昇率を2.7%と、今年4月時点の2.2%から大幅に上方修正しました。
今年度という足元の見通しを、わずか3か月で0.5ポイントも修正するなんて、関税問題の不透明性を差し引いても、あまりに大きく、いかに物価高を甘く見ていたかを物語っているように思えます。
それにもかかわらず、来年度については1.8%と、わずか0.1ポイントの修正にとどめています。1年で2.7%から1.8%へと、一気に0.9ポイントも物価が下がり、物価高は収束するというのです。
日本の消費者物価は生鮮食品を除いた指数で、現在、3%台後半と、先進国の中で最も高くなっています。毎月の値上げ品目も多く、円安も修正されない中で、どのようなメカニズムで3%台後半のインフレが1%台に戻るのか、私には理解できません。そして翌27年度には見事に2.0%になるというのです。