中高年が励まされた「続・続・最後から二番目の恋」

影山 「続・続・最後から二番目の恋」(フジ)がよかったです。 

テレビは若い人に見てもらってナンボと長らく言われていて、その結果50、60代、私たち世代にエールを送ってくれるドラマが全然ありませんでした。そんな中この作品があらわれて、僕はこれほど月曜9時が楽しみだったことはここしばらくなかったですね。中高年に対して、まだまだ老け込むのは早いよという、甘いのかもしれませんが、温かく強いメッセージをもらったドラマでした。

岡田惠和さんの脚本がすばらしい。ご自身は「岡田の本はいい人ばっかり出てきて薄っぺらい、と言う人がいるんですよ」と自虐しておられますが、岡田さんの、いい人で彩られているドラマは、今でこそ欲しいテイストだと思います。

最終回は一人一人にちゃんといいところがつくってありました。最終回に限らず、ドラマ全体の中でもそれぞれの見せ場をつくる。文字どおりの端役という人はいないんだ、ということですね。

中でも、坂口憲二さんは実際に難病を乗り越え、この作品で11年ぶりに連ドラに復帰しました。そことリンクしたような形で、ドラマの中でも重大な病気を克服する。

さらに(過去作で)坂口さんの主治医を演じていた高橋克明さんが昨年亡くなっているんですが、坂口さんの病との向き合い方を描く中で、高橋さんのエピソードが見事に挿入されていました。亡くなった方への単なるオマージュ、弔いではなく、ドラマの中で大事なポイントのシーンでした。

石田ひかりさんの父親役だった織本順吉さんも亡くなっていますが、この方にもちゃんといい場面が用意されていました。こういうところの一つ一つに、チーム岡田というか、チームワークのすばらしさを感じます。

倉田 中高年が誰しも抱える将来への不安、この先ずっと働けるかとか、そういう不安に対して、そんなことはないと伝えてくれる。そして、中井貴一さんと小泉今日子さんが丁々発止とやりあうシーンが、ただ言い合っているだけなのにすごくおしゃれなんです。すてきな大人像を見せてくれる作品でした。

田幸 一方で彼らは、世代的にはバブル世代かその少し前で「豊かな世代の人たち、いいね」みたいに感じるところもありました。私はまさに氷河期世代なので。ただ、いい時代を生きた人でも、いい時代を知っているからこそ、どんどん厳しくなって落ちていくのを一生懸命支えなければいけない。よかった時代と同じやり方では持ちこたえられない。そこがかなりぶっちゃけて書かれています。

影山 恵まれた人、選ばれし人たちだねという声は僕もよく耳にしました。僕自身はバブル前々夜の入社で、それはもう楽しかったしイケイケでしたけど、気がついてみたら「ちょっと待って。こんなおじいになって」みたいなところはある。その辺の苦悩というか、そのへんもうまく描かれていました。

年を重ねたら老いぼれて引っ込んでいくのではなくて、60歳ぐらいはまだまだ未熟で、人間として仕上がってない。そういう部分を出演者たちが露呈してくれているところに救われました。こんなふうに年を重ねていってもいいんだという免罪符をもらったようです。

田幸 前作のときには、中井さん演じる長倉和平という人が優柔不断で、それほど魅力的に思えなかったんですが、今見るとこういう男性が増えれば世の中やりやすいのにと思いました。

名キャッチャーで、人に対する加害性がない。上の世代の人たちはホモソーシャルな世界観の中で力強く勝ち抜かなければいけなかった。その中で長倉は異質で、困り事を放っておけず、つい引き受けてしまう。受け手で加害性のない男性というのは、こんなにも魅力的に頼もしく見えるんだという、長倉ラブが起こりました。