「入学式の前の日に持っていくよ」の約束が…

鹿児島市に住むパート従業員のゆまさん(仮名・43)。自営業の夫(41)、長男(18)、長女(17)、次男(15)、次女(14)の6人家族だ。

長男は、小学生のころは大工さん、高校生になってからは建築を勉強したいという夢を持ち、この春、福岡県内の大学に合格。念願の建築学部に進学が決まった。

3月20日ごろ鹿児島市の紳士服店に行き、母子で入学式用のスーツを選んだ。試着で息子のスーツ姿を初めて見て、「ああ、いよいよ巣立っていくんだな」と嬉しさとさみしさを感じた。

長男が選んだのは好きな「黒」のスーツ。ネクタイ、靴、ベルトもそろえた。ただ、裾上げに思ったより時間がかかって、引っ越しには間に合わないことが分かった。「お母さんが受け取って、入学式の前の日に持っていくよ」ということになっていた。

久留米市ー鹿児島市 直線距離で約250キロ離れている

4月4日、大学入学式の前日。仕事 やほかの子ども3人の世話もあり、鹿児島から新幹線で久留米に着いたのは午後9時すぎ。駅に迎えに来てくれた息子と夕飯を食べ、息子のアパートに帰って、あとは寝るだけ。

大学の入学式はどんな感じかなあ、と話しながら横になったところで、息子がぽろっと「スーツはどこにあるの?」とたずねてきたのだった。