「YOKOZUNA(横綱)」が吊り上げたのは…

午前9時頃、現場で動きがあった。ジョージ・ワシントンの横にある巨大なクレーンが動き出した。ちなみにクレーンの愛称は「YOKOZUNA(横綱)」。「YOKOZUNA」のワイヤーは張っていて、何かを吊り上げていることが確認できた。
そして、約30分後、茶色のコンテナが姿を現した。
コンテナはジョージ・ワシントンの艦側から搬出され、隣に係留されたアメリカ船籍の民間の運搬船に載せられた。作業は断続的に2時間ほど行われ、3個のコンテナが積み込まれた。この中に放射性廃棄物が納められていたとみられる。コンテナの方向転換などのために作業員が吊り下げられたロープを引っ張っている様子も確認できた。
横須賀市によると在日アメリカ軍側から「安全管理に従事する日本人従業員はコンテナに触れることはない」と連絡があったという。
原子力規制委が公表している海保の放射能調査艇による測定結果では、この日、異常な数値は確認されなかった。
船舶の位置情報を閲覧できるホームページ「Marine Traffic」では運搬船は、25日午前10時現在、日本から約4500キロ離れた太平洋を航行していることが表示されていた。この船は横須賀から約7700キロ離れたアメリカ西海岸の北部にあるシアトル近郊の港に向かうことになっていて、放射性廃棄物はアメリカ本土で最終処分される見込みだ。
長年、横須賀市で「軍拡」の動きに抗議してきた呉東正彦弁護士はこう語る。
「横須賀基地での原子力艦の動力装置(原子炉)の修理と、放射性廃棄物の搬出は禁止されている。日米合意に違反した作業が強行され、横須賀市民の安全や不安を無視している」。