JP日本郵政グループは3~4区でトップに立つ可能性

当初は3強と言われていた今年のクイーンズ駅伝だが、こちらの記事(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1572879)で紹介したように、廣中璃梨佳の復調が十分に見込めることがわかり、JP日本郵政グループも含め4強と見る意見が指導者間でも出始めた。

1区の菅田は日本選手権10000m5位、区間上位でつなぐだろう。2区の牛は昨年も2区で区間2位。「牛も昨年と同じくらいの調子です。1、2区は良い位置でつなげると思います」と髙橋昌彦監督。

3区の廣中が前述のように、今年まったく試合に出ていない。クイーンズ駅伝3区がぶっつけ本番になるが、その点に不安はないかを髙橋昌彦監督に確認した。「一時期は廣中1区、菅田3区を考えましたが、廣中の状態が上がり始めて、1区で数秒抜け出すより、3区で大きくタイムを稼ぐ方がいいと考えました。そして4区に、これまではチームで6番目の選手を置いていましたが、今年は一番強いカロラインを起用できます。廣中は未知数のところもありますが、カロラインが控えていることでのびのび走ることができます。廣中くらいの選手は良いリズムで練習ができていれば、レースに出なくても自分で上がり方がわかります」。
髙橋監督は3、4区でトップに立つ展開を考えている。

その展開に持ち込めたとき、勝負を決するのは5区の鈴木亜由子(33)になる。JP日本郵政グループが創部した14年から在籍している唯一の選手で、今年で10年連続出場になる。名古屋ウィメンズマラソンで2時間21分33秒の自己新で3位(日本人2位)。パリ五輪代表入りは惜しくも逃したが、その後、現役続行を決意した。

だが名古屋後はレース出場も少ない。一時期は駅伝メンバーに入れない可能性も、髙橋監督は口にしていた。しかし今は「長い距離になれば菅田より強い」という状態まで上げてきた。「理想は廣中でトップに立って、カロラインで差を広げることです。できれば5区に渡るときに1分くらい欲しい。鈴木は『私が5区ですか』と言っていましたね(笑)」。

髙橋監督が鈴木のコメントをメディアに笑いながら話したのは、2人の間に信頼関係があることの裏返しだろう。世界陸上とオリンピックに5000mと10000mで出場し、東京五輪にはマラソンで出場した。鈴木が日本郵政チームの成長を支えてきた功労者であるのは、誰の目から見ても明らかだ。

駅伝も前述のように10年連続で出場し続けて来た。直前に監督に不安を漏らすのは普通のことで、それでも日本郵政は3回の優勝を果たしてきた。

ただ、今年は厳しい状況になる。積水化学の新谷は10000mのタイムで、資生堂の一山はマラソンで鈴木を上回る。前半で後れなければ、9月のベルリン・マラソンで2時間20分31秒(日本歴代7位)で走ったエディオンの細田あい(28)も追い上げてくる。

JP日本郵政グループが優勝候補の1つになって、勝負が終盤に決する可能性が大きくなった。21年優勝の積水化学は3区で、22年の資生堂は4区で、23年の積水化学は3区でトップに立って逃げ切った。5区でトップに立って優勝した最後のチームは、20年の日本郵政だ。

今年のクイーンズ駅伝は、久しぶりに終盤まで勝負がもつれるかもしれない。5区にも役者が揃い、決戦の舞台は整った。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は左から廣中選手、新谷選手、高島選手