「囚われずに表現」と佐井監督
佐井さんがドラマ制作に携わっているので、映画は、非常にスタイリッシュ。作り方で意識したことについて、聞いてみました。
神戸:かなり、ケレン味のある作り方をしていますよね。例えば、現在の「方舟」の皆さんの映像が少し彩度を落としてあって過去の映像のような色彩になっている後に、古い資料映像が鮮明なカラーで来たりとか。
佐井大紀監督:さっきの多面性の話じゃないですけど、過去と未来、過去と現在ももちろん、映像的なフィルムとデジタルとか、いろんなことがとにかく多面的で、時間と空間というものを行き来しながら物語っている映画なんですよね。かつ「イエスの方舟」の皆さんは、見方次第でいろいろな捉え方ができる。記者の見方、社会学者の見方、女性作家が見る形だと、全部違うと思うんです。
佐井大紀監督:でも、結果的にはよかったな、というか。やっぱり、「飽きさせたくない」とものすごく思ったんですよね。ドキュメンタリーって、事実を正確に誠実に伝えるところに囚われてしまって、そもそも本当にそれを伝えるんだったら文章でいいじゃないか、なぜ映像メディアで音声もあるものでやるのか、というところをついつい忘れてしまいがちな瞬間がある。映像表現としてやることの意味を考えながら、同時にお客さんに飽きさせない、ずっと見ていてもらえるようになることを、すごく意識してやりました。

「ドラマの作り手だなあ」という気がしました。僕らの仕事は、音声と映像をつないで情報を伝えていくもので「音ならでは」「映像ならでは」の力を最大限にするべきだ、というのは全く同感です。映画の冒頭とラストは、ドローンの美しい映像を使っていますが、RKB映像部が撮影したものです。ドキュメンタリー映画『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』は、全国に先駆けて東京(ポレポレ東中野)と福岡(KBCシネマ)で上映中です。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、長崎支局で雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュース報道やドキュメンタリーの制作にあたってきた。23年から解説委員長。最新の制作ドキュメンタリーは、『リリアンの揺りかご』(映画版、80分)。