大地が干からびる乾季に大湿地が出現「オカバンゴ・デルタ」

今も広がり続けているドナウ・デルタ。それよりも巨大な三角州が、アフリカにあります。ボツワナの自然遺産「オカバンゴ・デルタ」です。面積は日本の四国とほぼ同じ。ここの面白いのは、通常は大地が干からびる乾季になると、なぜか水にあふれた大湿地が出現すること。

実は800キロ離れた高原に降った雨が、オカバンゴ川を流れてデルタにたどり着くまで三ヶ月かかるため、水が湿地を満たすときには乾季になっている・・・つまり水の移動によって時間差が生じていたのです。
水が到達すると草木が芽吹き、それを食べる草食動物が集まり、さらに獲物を狙って肉食動物もやってきます。そのためオカバンゴ・デルタは動物を撮影するにはもってこいの場所です。


ドローンで撮影した、湿地を移動するアフリカゾウやカバの群れ。キリンが長い脚で水飛沫を上げていく姿も撮影できました。

ビックリしたのは、ライオンもいたこと。普通、ライオンは身体が水に濡れるのを嫌うといわれます。ところがオカバンゴ・デルタでは、水浸しの湿地を歩くライオンがいたのです。獲物を狙い、濡れることをいとわないライオンを捉えた貴重な映像となりました。
古代エジプト文明を生んだナイル川・デルタに代表されるように、川が運んだ土が堆積した三角州は肥沃な大地となります。イタリアでは、その三角州の開発による富がルネサンスの理想都市フェラーラを生みました。そしてルーマニアでは渡り鳥の楽園、アフリカでは動物たちの楽園・・・まさにデルタは自然と文化、世界遺産のゆりかごなのです。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太