(ブルームバーグ):キオクシアは3日、最先端フラッシュメモリーのサンプル出荷を始めたと発表した。既存製品に比べデータ転送速度を向上させるなど性能を高めており、AIデータセンター向け事業の強化につなげる。
「第10世代」と呼ばれる製品で、基準となる第8世代と比べて単位面積で保存できるデータ量が59%向上するほか、消費電力も削減した。記憶素子を積み重ねていき性能を高めており、第10世代では積層数が332層と第8世代(218層)の約1.5倍となる。2025年9月に稼働した北上工場(岩手県北上市)の第2製造棟で生産する。
第10世代はAIデータセンター需要を取り込もうとする同社の戦略にとって重要な製品だ。従来スマホやパソコンなどコンシューマー製品向けのNAND型フラッシュメモリーも手がけてきた同社だが、足元では比較的収益性の高いデータセンターなど法人向けを強化する。28年度までに売上高全体の6割まで比率を高めていく考えだ。
同日北上工場で記者団らに対し、親会社であるキオクシアホールディングスの太田裕雄社長は、エージェントAIやフィジカルAIへの進化に伴うマーケットの拡大に期待していると説明。「市場の成長にしっかり応えていきたい」と述べた。また近くハイパースケーラーなど大手IT企業が北上工場を訪問することも明らかにした。

英国の市場調査会社オムディアの南川明氏は、DRAMを手掛ける韓国の競合に比べると、これまで「キオクシアはデータセンター向けに販路を持たずそこまで強くなかったという印象だ」と話す。昨年末時点でのデータセンター向けNANDのシェアは、サムスン電子が4割、SKハイニックスが3割、キオクシアは1割程度だったという。
ただ足元ではキオクシア製品の強みが評価されつつあり、存在感を急速に高めているといい、「第10世代は非常に競争力のある製品だ」と期待を示す。
調整局面
6月はじめにキオクシアHDが開いたIR説明会では、最先端品の第10世代は約1年後の量産開始を予定しているとの見通しを示していた。最先端製品の実用化にこぎ着け、AIデータセンター向け事業にはずみがついた一方、ここに来て不安要素が顕在化している。
2日に米アップルが中国製メモリー半導体の調達を検討と伝わったことなどで、メモリー関連企業の競争激化の見方が浮上。キオクシアHD株を含めて半導体株がここ2日で急落した。3日の取引では1日の終値に比べて一時24%安の6万7190円を付けた。その後、上昇に転換。終値は8万3300円だった。
半導体業界はシリコンサイクルと呼ばれる好不況の循環の影響を受けやすく、業績が上下に揺さぶられてきた。AI関連需要の急拡大期到来という「スーパーサイクル」論に支えられてメモリー各社の株価は上昇してきたが、市場では改めてシリコンサイクルが意識され、調整局面を迎えている。
シグナル
キオクシアHDにとって設備投資の判断は経営の要だ。機会損失にならないようにしつつ、過剰投資を避ける必要もあり、難しいかじ取りを迫られる。
AIを巡っては過剰投資を懸念する声が定期的に浮上するが、太田氏はAI関連投資に関して弱まるような「シグナル」は今のところ見えていないと説明。一方で設備投資に関しては、スマホ向けなども考慮しないと過剰供給になって価格破壊を起こす可能性もあり、全体のバランスに気を配るとの姿勢を示した。
ただ仮にAI需要がけん引し市場全体の成長率が想定よりも上振れすると判断した場合には、「当然それに対してCAPEX(設備投資)を少し見直す必要性があると思う」と述べた。
(10ー12段落目に社長のコメントなどを追加して更新します)
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