・米国は移民文化が融合し独自の進化を遂げた“食の実験場”
・米国のファストフードは宗教や思想、階層の分断を映す鏡
・南部のバーベキュー等に刻まれた奴隷制の記憶と共同体の絆
ビジネスパーソンにとって、アメリカ社会の多様性や分断を理解することは、グローバルビジネスにおける重要な視点となる。本記事では、アメリカの食文化の裏側にある歴史と思想について、立教大学文学部教授の加藤喜之氏とTBS CROSS DIG with Bloomberg 竹下隆一郎の対談から紐解いていく。ハンバーガーやピザ、南部料理など、身近な「食」からアメリカ社会の深い本質が見えてくるのだ。

アメリカは食文化の実験場
アメリカ料理といえばハンバーガーやフライドポテトを思い浮かべる人が多いが、実はその多くが移民によって持ち込まれたものである。
竹下:
ハンバーガーがドイツ料理だったり、フレンチフライもフランスとかベルギー式だし、あとはピザとかもアメリカ人は好きですけどイタリアに由来していたり。
加藤:
アメリカの場合はとにかく文化的な背景が多様だから、そこで繰り広げられる相互作用であったり、様々な文化が交流して新たなものが作り出される。
米国は多種多様な文化が交わり、新たなものを生み出す食の実験場として発展してきたのだ。
その象徴がクリエイティブな寿司ロールや、米国風中華料理チェーンである「パンダエクスプレス」だ。フライした魚介類にマンゴーを乗せたドラゴンロールや、フードコートで温められ続けて水分を失ったカリカリの米などは、現地で独自の“進化”を遂げた結果である。


また、食は個人のアイデンティティや思想を強烈にアピールする手段でもある。環境問題を語るビーガンや、ウォーターボトルを持ち歩く姿勢は、自身の価値観を明確に示す行動なのだ。
加藤:
アメリカ人は自分が何者なのかということを明確に言語で表現するし、食は儀礼のひとつだけど、その儀礼を通して自分はこういう人間なんだっていうことを打ち出したがる。