ウクライナがロシア領内に行うミサイル攻撃の範囲と強度を拡大している。世界最大の国土を持つロシアだが、約半数の地方で今年に入りミサイル警報が発令された。

直近の1週間だけで、沿ボルガ連邦管区の少なくとも5地域のほか、南部のアストラハン州、北カフカス連邦管区の少なくとも4地域、中央連邦管区のモスクワ市、ウラジーミル、タンボフ、オリョール、リペツクの各州でミサイル警報の発令があった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、前線から1300キロメートル余り離れたウファの石油精製施設に2回目の攻撃を加え、沿ボルガのペンザ州にあるミサイル部品製造工場にも打撃を与えたとX(旧ツイッター)に投稿した。

ブルームバーグ・ニュースは、これらの攻撃について独自に確認できていない。

ウクライナはロシア市民に戦争を身近に感じさせる一方、プーチン大統領に交渉に応じるよう圧力をかけようとしている。こうした中で攻撃の規模や地理的な広がりは、ウクライナの長距離攻撃能力と戦術の進化を浮き彫りにする。

戦争初期には、ロシアでミサイル警報が発令される地域はウクライナとの国境地帯と占領地域にほぼ限られていた。

だが、今年に入ってからは、ロシアの70%余りの人口が居住する地域で少なくとも1回はミサイル警報が発令されていることが、ブルームバーグが地方当局の発表を分析した結果、明らかになった。

ウクライナ国境から東へ約3000キロメートル離れた西シベリアのオムスク州でも、6月に初めてミサイル警報が発令された。警報発令はウラル地方全域に及んだ。

ボルガ川沿いに位置し、人口約120万人を擁するサマラでは、今週警報が発令された際に地上の公共交通機関の運行が一時停止となり、地下鉄は住民の避難場所となった。

ウクライナと国境を接するボロネジ州では先週のミサイル攻撃で5人が死亡し、その後は空襲警報がほぼ毎日鳴り響く。ボルゴグラード州では週末にミサイルによる攻撃で2人が死亡。ウクライナはこの攻撃に国産ミサイル「フラミンゴ」を使用したとしている。

ロシア北西部のノブゴロド州とプスコフ州でも、ロシアが2022年にウクライナへの全面侵攻を開始して以来初めて、ミサイル警報が今週発令された。

ロシア大統領府のペスコフ報道官はコメントを控えた。

フラミンゴ巡航ミサイルが初めて1500キロメートルを超えて飛行し、沿ボルガ地方のチェボクサルにある防衛関連工場を攻撃したとゼレンスキー氏が発表したのは5月だった。

それ以降、ウクライナはドローン(無人機)に加え、国産の長距離巡航ミサイルの使用頻度を増やしており、ロシア領内深くにある軍事・産業上の標的を攻撃できるようになっている。

英国の国際戦略研究所(IISS)で軍事航空宇宙を専門とするシニアフェロー、ダグラス・バリー氏は「ウクライナの長距離攻撃作戦に重大な進化があった」と指摘し、「大型の弾頭をロシア領内深くに撃ち込むことが、フラミンゴで可能になった」と述べた。

長距離ドローンや巡航ミサイルによるロシアの重要インフラへの攻撃で、「ロシアの軍需産業や経済に打撃を与えるとともに、ウクライナとの戦争にはコストが伴うことをロシア市民に強く認識させる効果を生んでいる」と、バリー氏は論じた。

こうした攻撃はロシア当局に対する圧力を強めるはずだとする一方で、プーチン氏が交渉に前向きになるかどうかは別問題だとくぎを刺した。

ウクライナはここ数週間、ロシアの主要石油精製施設をドローンで集中的に攻撃し、一部は稼働停止に陥った。その結果、6月末までにロシアのほぼすべての地域で、燃料の配給制限やガソリン供給の混乱が報告されている。

原題:Ukraine’s Missiles Now Have Almost Half of Russia Within Reach(抜粋)

--取材協力:Tom Hall、Kollen Post、Alex Newman、Alex Kokcharov.

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