「不安な人ほど出世する」という大企業の病理
上司側が若手の提案を受け入れられない背景には、マネージャー自身の「不安」がある。渡邉氏が大企業で「役員に上がるトップ5%」のデータを分析したところ、驚くべき事実が判明した。

「さまざまなデータを分析していったのですが、1個だけ違いがあって、ストレス耐性が低ければ低いほど役員に上がるという結果だったんです。つまり、不安な人ほど役員に上がりやすい。プレイヤーのときにミスをしないということが、非常に高く評価されるメカニズムになっていたからです」
緻密な調整とリスクヘッジを得意とする「不安症」の人ほど出世しやすい。しかし、こうしたリーダーが率いる組織では、計算が立たない提案を持ち込まれると、無意識に排除してしまう。これが若手のやる気を削ぐ最大の原因だ。
渡邉氏は、この問題を解決するために「会議の削減」や「顧客視点へのシフト」を挙げる。
「みんなやっぱり商売がしたいし、お客さんに貢献したいというニーズはめちゃくちゃある。会議ではなく現場に聞きに行こう、お客さんのところに行こうと案内すると、会議は結構減るんです」
組織の熱量を高める「FANS(ファンズ)モデル」
渡邉氏は、累計3万人の人事データと学術的理論を掛け合わせ、仕事が面白くなってワークエンゲージメントが高まる4つの条件を可視化した。それが「FANS(ファンズ)モデル」だ。
F(貢献実感)Feeling of Contribution:お客様からの感謝や、社会のためになっているという実感
A(自己決定感)Authority:小さなことでも自分で決めて、任されているという感覚
N(新規性・創造性)New:斬新なことを求められ、試行錯誤できる環境
S(仕事のスピード感)Speed:意思決定の速さ(承認ハンコの少なさなど)

「ビラを配る時でも、どの駅で配るか、デザインをどうするかを自分で決めると、ワークエンゲージメントはものすごく上がります。この4つの条件を整えていくと、数多くの提案が出てくるようになります」
このモデルを実践するため、経営陣は「権限に基づき、任せられる人にちゃんと任せる(不要に介入しない)」ことが求められ、管理職は「自分が持っている権限の範囲内で思い切り部下に任せてみる」ことが重要になる。