(ブルームバーグ):大手コンサルティング会社では従来、経営学修士(MBA)課程を修了した後に入社し、実務経験を積みながら昇進し、最終的にシニアパートナーを目指すのが一般的なキャリアパスだった。だが、各社がAIやその他の専門分野に関する知見を顧客に提供しようと競い合う現在、新たなルートが生まれつつある。
企業経営者や各国首脳の助言役として知られるマッキンゼーは最近、新たに設けた「ディスティングイッシュド・パートナー」の役職に、21人のコンサルタントを昇格させた。マッキンゼーのシニアパートナーで、顧客対応能力部門のグローバル責任者を務めるベッカ・コギンズ氏によると、この役職は「専門分野での世界トップクラスの知見」を持つ人材を評価するために設けられた。
事情に詳しい関係者によると、新たな役職はパートナーからの昇進に当たり、シニアパートナーほどではないが報酬も引き上げられる。
人材紹介会社や業界コンサルタントのデータによると、マッキンゼーのパートナーの年収は約50万-150万ドル(約8000万-2億3700万円)、シニアパートナーは業績が良い年には最大500万ドルに達する。マッキンゼーは報酬についてのコメントを控えた。
ディスティングイッシュド・パートナーの新設は、AIなど複雑な分野に関する専門知識への顧客ニーズが高まっていることの表れだ。AIが日常業務に浸透し、従来型コンサルティングの需要が減少する可能性に備える意味合いもある。
人材紹介会社ディフィニティブ・コンサルティングのパートナー、ブライアン・ベルナルデス氏は「顧客は目が肥えてきており、単なるコンサルタントでは差別化できなくなっている。顧客が求めているのは、実際に経験を積み、その分野について説得力を持って語れる人材だ」と指摘した。
専門スキルへの需要
テクノロジー分野の専門知識から生まれるビジネス機会は極めて大きい。マッキンゼーが昨年、105カ国・地域で実施した調査では、回答者の約3分の2が、自社ではAIを事業全体へ本格展開する取り組みがまだ始まっていないと答えた。
ベインの調査によると、自動化を導入した企業の多くは、期待していたほどのコスト削減効果をまだ実感していない。
大手経営コンサルティング会社に加え、アクセンチュア、キャップジェミニ、EYといったテクノロジー系に強いコンサルティング大手も、この需要の獲得を競っている。調査会社ソース・グローバルによると、米国のテクノロジーコンサルティング市場は今年7%成長する見込みだ。
AIがコンサルタントの雇用を減らすとの懸念がある一方で、短期的な見通しは明るい。人材紹介会社モルガン・マッキンリーは先月、会計・コンサルティング分野は2026年のロンドン金融業界で最も高い成長が見込まれる分野の一つで、求人件数は21%増加するとの見通しを示した。
ベイン広報によると、同社では2020年以降、AI・アナリティクス部門が経験者採用の約半数を占めるようになり、人員は3倍超の1500人以上に増えた。ボストン・コンサルティング・グループの広報は、案件の40%で専門分野のコンサルタントが関与していると述べた。
マッキンゼーではこれまでも、従来のゼネラリスト中心の体制や昇進制度を変化させてきた。1970年代には専門分野別の組織を設け、1990年代には専門家向けのキャリアトラックを導入した。AIは、その流れをさらに加速させている。
ディスティングイッシュド・パートナーとなったホルガー・ヒュルトゲン氏は、AI関連案件の増加により、自身の専門分野への需要が非常に高まっていると述べた。また、この新たな役職は、「熱狂し過熱した」人材市場において、技術人材を引き留めるための仕組みでもあるとの見方を示した。
ヒュルトゲン氏は、「今、技術者を100人採用できれば、その全員を翌週からすぐに配置できる。本当に需要は非常に大きい」と語った。
業界調査会社K2コンサルティング・リサーチのマネージングパートナー、トム・ローデンハウザー氏は、マッキンゼーにとって専門家をディスティングイッシュド・パートナーへ昇格させることは、その専門性を評価する一方で、シニアパートナーの人数を抑える狙いもあると指摘した。同氏は、「権限も報酬も薄まってしまうため、最上位層の人数を増やしすぎたくないのだ」と述べた。
マネジメント・コンサルテッドのナマーン・ミアン最高執行責任者(COO)は、コンサルティング会社が業務領域を拡大していることも、専門家パートナーの増加につながっている理由の一つだと指摘した。ミアン氏は、マッキンゼー、BCG、ベインの3大経営コンサルティング会社について「より実務に近い領域へと事業を広げており、そこに成長機会を見いだしている」と語った。
原題:McKinsey and Consulting Rivals Bet on Experts to Ride AI Wave(抜粋)
--取材協力:Matthew Boyle.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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