食ロス対策を「暮らしにうれしい選択」へ翻訳する~「Too Good To Go」の事例

1)デンマーク発のサービス~店舗で余った、まだ食べられる食品をサプライズと共にお得に提供

Too Good To Goは、デンマーク発のフードロス削減サービスだ。店舗で余ってしまった、まだ食べられる食品を「サプライズバッグ」としてアプリ上に出品し、ユーザーはそれを予約して、指定時間に店舗で受け取る。中身は受け取るまで分からない。その代わり、通常よりもお得な価格で購入できる。

Too Good To Go社によれば、サービスは現在、世界21カ国で展開されており、1.2億人以上の登録ユーザー、18万以上の加盟パートナーを持ち、(2026年4月現在)累計で5億食以上の食品ロス削減につなげているという。日本では2026年1月に正式ローンチし、2026年5月初旬時点で国内ユーザーは45万人、加盟店は約300店舗にまで拡大している。

日本でのタグラインは、「おいしい選択。」である。

食べものとしておいしい。お財布にもおいしい。そして、環境や社会にとってもおいしい。そこには、社会課題への参加を正面から説得するのではなく、消費者が自然に参加できる体験へ置き換えようとする考え方が読み取れる。この点について、Too Good To Go Japanの大尾嘉宏人代表は、次のように語る。

「Too Good To Goは、単なるフードロス削減を訴求するというより、店頭に陳列された商品に、別の流通方法を与え、新しい流通経路をつくり出す、という考え方をとっています。つまり、これまで設定した期限が来てしまい、廃棄していたものに別の居場所を提供するということ。まだ価値があるものを、経済合理性の観点から、より価値あるものにする視点が、店舗の食品ロスを考えるうえで重要だと思いました」

2)フードロス削減=店頭商品に新しい流通経路をつくり出す、という考え方

食品ロス対策は、ともすると「社会全体で廃棄を減らしましょう」という理念や啓発の言葉になりやすい。しかしToo Good To Goは、廃棄されるはずだった食品に別の流通経路を与え、消費者にとってはお得さや発見のある購買体験に変えている。

店舗にとっては、廃棄コストの削減だけでなく、これまで失われていた価値を再び収益化する機会にもなる。食品ロスを単に「減らすべきもの」としてではなく、「まだ価値があるもの」として捉え直す考え方が特徴的だ。

この見方は、循環経済を単なる資源管理というより、むしろサービスを通じた価値維持・価値再生・価値共創のプロセスとして捉える近年の研究とも重なる。食ロス対策を「努力」や「協力」の問題としてだけ見るのではなく、価値あるものを別の形で消費者に届け直すサービス設計として見ることができるとも言えるだろう。